診療マル秘裏話　 号外Vol.1772　令和2年4月10日作成

作者　医療法人社団　永徳会　藤田　亨

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目次

1)難治性大腸ガン動物ﾓﾃﾞﾙにCMG 顕著な治療効果
2)高線量率放射線治療線源可視化と,品質保証ﾂｰﾙ

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　医療界のトピックスを紹介するこのメールマガジンは
1週間に1回の割合で発行しています。もっと回数を増や
して欲しいという要望もあるのですが、私の能力のなさ
から1週間に1回が限度となっています。これからも当た
り前の医療をしながら、なおかつ貪欲に、新しい知識を
吸収し読者の皆様に提供してゆきたいと思っております。
不撓不屈の精神で取り組む所存ですのでどうかお許し下
さい。

1】 難治性大腸ガン動物ﾓﾃﾞﾙにCMG 顕著な治療効果

　京都大学は３月16日、大腸ガ
ンの標準治療薬オキサリプラチ
ンが効かなくなった治療抵抗性
大腸ガンの動物モデルにおいて、
水溶性プロドラッグ型クルクミ
ン（CMG ）が、顕著な抗腫瘍効
果を示すことを明らかにしたと
発表しました。これは、同大医
学研究科の金井雅史特定准教授、
同大大学院薬学研究科の掛谷秀
昭教授、株式会社セラバイオフ
ァーマらの研究グループによる
ものです。研究成果は、国際学
術誌「Cancer Science」のオン
ライン版に掲載されています。
ショウガ科のウコンに含まれる
ポリフェノール化合物クルクミ
ンは、ガン、心臓病、アルツハ
イマー等に対する治療薬として
の開発が期待されています。研
究グループはすでに、生体内に
おいて、CMG がクルクミンのプ
ロドラッグとして利用できるこ
とを証明しています。さらに、
ヒト結腸腺ガンHCT116細胞を移
植したマウスゼノグラフトモデ
ルにおいて、CMG は体重減少、
骨髄抑制、肝障害などの副作用
を伴うことなく、顕著な抗ガン
活性を発揮することも明らかに
しています。

大腸ガンの約40％に認められて
いるKRAS変異は、抗ガン剤オキ
サリプラチン療法に対する治療
抵抗性の要因であると考えられ
ており、この治療抵抗性メカニ
ズムとして、KRAS変異によるNF
-κB経路の活性化が挙げられま
す。一方、クルクミンはこのNF
-κB経路およびプロテアソーム
などを阻害することが報告され
ています。そこで研究グループ
は、オキサリプラチンに抵抗性
を持つヒト結腸腺ガンHCT116細
胞（KRAS変異、ガン抑制遺伝子
p53 欠損）を移植したマウスゼ
ノグラフトモデルにおけるCMG
の抗腫瘍効果を検討しました。

その結果、CMG は生体内におい
てクルクミンに変換され、KRAS
変異によって活性化された NF-
κB 経路を抑制し、オキサリプ
ラチン投与により認められる体
重減少、骨髄抑制、肝障害など
を伴うことなく、顕著な抗ガン
活性を示すことが明らかになり
ました。また、CMG はオキサリ
プラチンと併用することで、相
加的な抗ガン効果を示し、オキ
サリプラチンの副作用を増強し
ないことも明らかになりました。

今回の研究成果により、CMG が
オキサリプラチン抵抗性大腸ガ
ンに顕著な抗腫瘍効果を発揮す
ることが明らかになりました。
すでに、クルクミンがNF-κB経
路およびプロテアソームなどを
阻害すると報告されていること
から、CMG は、両経路が異常に
活性化された難治性ガンなどに
対して、安全性の高い治療薬と
しての実用化が期待されます。

　両経路が以上のように異常に
活性化された。　　　　　笑

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2】 高線量率放射線治療線源可視化と,品質保証ﾂｰﾙ

　名古屋大学は３月17日、高線
量率放射線治療の線源の可視化
に成功し、同療法における新た
な品質保証ツールを開発したと
発表しました。これは、同大大
学院医学系研究科の余語克紀助
教らのグループと、北里大学、
東京西徳洲会病院、広島ガン高
精度放射線治療センター、広島
大学との共同研究によるもので
す。研究成果は、「Scientific
Reports」オンライン版に掲載
されています。放射線療法の１
つである「高線量率小線源治療」
は、副作用が少なく、子宮頸が
んなどに集中して高い線量を投
与できるガン治療法です。放射
線を出す米粒大の線源を、専用
のチューブ等を通して体内のが
ん細胞近くまで運び、線源の止
まる位置と時間を制御してγ線
を当てる治療です。しかし、高
い線量率のため、線源動作のエ
ラーの見逃しがあると、誤照射
事故が起きる可能性があります。
そのため、治療前の検証で、線
源動作のエラーが目で見て分か
りやすい品質保証ツールがあれ
ば、事故を未然に防ぐのに有用
と考えられています。従来の品
質保証法では時間がかかり、い
くつかの異なる測定ツールを使
用する必要があり煩雑であると
いう問題があります。研究グル
ープは、目に見えないγ線を可
視化するため、人体に組成が近
く、身近な、「水の発光」（チ
ェレンコフ光）に着目しました。
192Irγ 線源によって照射され
た水からの発光を、CCD カメラ
を使用して撮影し、投影画像を
得ました。シミュレーション計
算との比較から、観測された光
は、主にγ線からのコンプトン
散乱電子によって生成されたチ
ェレンコフ光であることを確認
しました。チェレンコフ光の分
布は、線源のごく近くを除き、
治療計画用ソフトウェアを使用
して計算された線量分布と一致
し、補正を必要としませんでし
た。

また、発光の強度から線源の強
さ（放射能）を測定することが
できました。さらに、発光画像
から線源の止まる位置を測定し
たところ、従来のフィルム測定
と同程度の空間分解能で測定で
きました。この方法は、一枚の
投影画像を使用して、線量分布、
線源強度、線源位置を同時に測
定できるため、高線量率小線源
治療の迅速かつ簡単な品質保証
法に適していると考えられます。

「この方法により、線源動作エ
ラーを未然に発見することで、
さらに、安全なガン放射線治療
に寄与すると期待される。放射
線による水の発光を、広くガン
放射線治療の品質保証法に適用
できる可能性を示すことができ
るため、さらなる応用が期待さ
れる」と、研究グループは述べ
ています。

　水の発光を発酵状態の評価に
使う。　　　　　　　　　　笑

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編集後記

　京都大学が３月16日、大腸が
んの標準治療薬オキサリプラチ
ンが効かなくなった治療抵抗性
大腸ガンの動物モデルにおいて、
水溶性プロドラッグ型クルクミ
ン（CMG ）が、顕著な抗腫瘍効
果を示すことを明らかにしたと
発表したのは、素晴らしい業績
です。水溶性プロドラッグ型ク
ルクミンは、ショウガ科のウコ
ンに含まれるポリフェノール化
合物クルクミンの働きはそのま
まに、ガン、心臓病、アルツハ
イマー等に対する治療薬として
の開発が期待されているプロド
ラッグ（体内に入ってからクル
クミンになる先駆物質）です。
私も、低分子高吸収型のクルク
ミンを内服していて、その効果
は実感しています。
　名古屋大学が３月17日、高線
量率放射線治療の線源の可視化
に成功し、同療法における新た
な品質保証ツールを開発したと
発表したのは、素晴らしい業績
です。　放射線治療を希望する
ガン患者さんにとっては、大き
な福音になるものと思われます。
放射線療法の１つである「高線
量率小線源治療」は、副作用が
少なく、子宮頸ガンなどに集中
して高い線量を投与できるガン
治療法ですが、高い線量率のた
め、線源動作のエラーの見逃し
があると、誤照射事故が起きる
可能性があったので、事故が起
きないよう、放射線による水の
発光を、広くガン放射線治療の
品質保証法に適用できる可能性
を示したのは、慧眼だったと思
います。

　歩哨が、索敵能力を保証され
る。　　　　　　　　　　　笑

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