最近の号外Vol.1869メルマガ

2021-06-04 22:36:43

カテゴリー:ブログ



 
藤田のブログランキングアップにご協力お願いします。
以下のバナーをぽちっとクリックお願いします。


病院・診療所ランキング

 

診療マル秘裏話  号外Vol.1869 令和2年8月1日作成

作者 医療法人社団 永徳会 藤田 亨

 
 
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

 
 
 
 
 
 
 
目次

1)免疫細胞のNrf2を活性化してガンの進行を抑制
2)SLEは,妊娠可能な女性に多く多彩な症状を惹起

 
 
 
 
 
 
 
 
 
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 
 
 
 医療界のトピックスを紹介するこのメールマガジンは
1週間に1回の割合で発行しています。もっと回数を増や
して欲しいという要望もあるのですが、私の能力のなさ
から1週間に1回が限度となっています。これからも当た
り前の医療をしながら、なおかつ貪欲に、新しい知識を
吸収し読者の皆様に提供してゆきたいと思っております。
不撓不屈の精神で取り組む所存ですのでどうかお許し下
さい。

 
 
 
 
 
 
 
1】 免疫細胞のNrf2を活性化してガンの進行を抑制

 
 
 
 
 
 
 
 東北大学は7月7日、ガン細胞
のNrf2を抑制するのではなく、
ガン周囲の正常細胞(特に免疫
細胞)においてNrf2を活性化さ
せることで、ガンの進行を抑制
できることを、マウスを用いた
実験で実証したと発表しました。
この研究は、同大大学院医学系
研究科の鈴木未来子准教授、山
本雅之教授らの研究グループに
よるものです。研究成果は「Ca
ncer Research 」のオンライン
版に掲載されています。Nrf2は、
細胞が毒物や酸化ストレスに曝
された際に活性化し、これらの
ストレスから細胞を防御する役
割をもつ転写因子です。肺ガン
の約20~30%には、Nrf2が常に
活性化するような遺伝子変異が
生じており、これによりガン細
胞は抗ガン剤治療や放射線治療
に対する抵抗性を獲得すること
が知られています。このような
Nrf2活性化を伴う悪性腫瘍に対
して、ガン細胞におけるNrf2を
抑制する治療法が検討されてい
ます。しかし、Nrf2はストレス
から正常細胞を守る役割もある
ため、Nrf2の抑制は副作用の懸
念があり実用化されていません。

一方で、以前に山本教授らの研
究グループは、免疫細胞などの
正常細胞でNrf2を活性化すると、
腫瘍の進行を抑制できることを
報告しました。そこで今回の研
究では、Nrf2活性化を伴う悪性
腫瘍についても、周囲の正常細
胞でのNrf2を活性化させること
で、腫瘍を抑制できるか検討し
ました。研究グループは、遺伝
子組換え技術を用いて、Nrf2を
抑制する働きをもつKeap1蛋白
質の量を減らすことでNrf2を全
身で活性化させたマウスと、対
照となる野生型のマウスに、Nr
f2活性化肺ガンを作らせ、ガン
の進行を観察しました。その結
果、野生型マウスと比べて、全
身でNrf2を活性化したマウスは、
腫瘍の大きさが減少し、生存率
が上昇しました。さらに、全身
でNrf2を活性化したマウスにお
いて、血液細胞(免疫細胞)で
のみNrf2を活性化しないように
すると、腫瘍抑制効果が弱まっ
たことから、特に免疫細胞にお
けるNrf2活性化が腫瘍抑制に重
要であることが分かりました。

研究グループは、「Nrf2は正常
細胞をストレスから保護する役
割をもつため、Nrf2を抑制する
治療法に比べて、この治療法で
は副作用が少なくなると考えら
れる。この研究成果は、予後不
良のガンに対する新しい治療法
の開発に結びつくものと期待さ
れる」と、述べています。

ガンの仕組みについて解説して

いる動画です。

 
 


 
 
 保護者の役割を反故にする。


 
 
 
 
 
 
 
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 
 
 
 
 
 
 
2】 SLEは,妊娠可能な女性に多く多彩な症状を惹起

 
 
 
 
 
 
 
 全身性エリテマトーデス(S
LE)は、全身のさまざまな臓
器に炎症を生じる難病です。妊
娠可能な年齢の女性に多く見ら
れる病気で、発熱、倦怠(けん
たい)感に加えて、皮膚の赤い
斑点(紅斑)、関節炎、腎炎と
いった多彩な症状を引き起こし
ます。その特徴や治療法につい
て、順天堂大学医学部付属順天
堂医院(東京都文京区)膠原(
こうげん)病・リウマチ内科の
田村直人教授に聞きました。S
LEは、自分の身体を細菌やウ
イルスなどから守る免疫システ
ムが異常を来し、誤って正常な
組織を攻撃することで発症しま
す。それにより、全身のさまざ
まな臓器に炎症が生じ組織が傷
つけられます。

 田村教授は「SLEの発症原
因は十分解明されていませんが、
遺伝的な素因のある人が、紫外
線、ウイルスなどの感染、妊娠・
出産、喫煙、ストレスなどの環
境的な要因の影響を受けて発症
すると考えられています」と説
明しています。

 男女比は約1対9とほとんど
が女性で、20~40代での発
症が多いとされています。国内
推計患者数は約10万人です。

 典型的には、発症初期に、発
熱、体のだるさ、体重減少など
の全身症状が表れます。頬に表
れる蝶(ちょう)が羽を広げた
ような形の赤い発疹(蝶形紅斑)、
円板状の赤い発疹といった皮膚
症状、脱毛、肘、膝、手などの
関節炎が特徴的です。腎炎によ
る手や顔のむくみ、肺や心臓の
障害による胸痛や息切れ、けい
れん発作などの神経障害なども
出現することがあります。患者
さんによって表れる症状やその
程度は大きく異なるということ
です。「SLEは症状が良くな
ったり悪くなったりを繰り返し、
完治するのが難しい病気です。
しかし、適切な治療を受けて、
健康な人とほぼ同様の生活を送
っている患者さんも多いのです」
と田村教授は言っています。治
療は、ステロイド内服薬、免疫
抑制薬などによる薬物療法が中
心となります。2015年には海外
のSLEの標準治療薬で、皮膚
症状や関節症状に有効とされる
ヒドロキシクロロキン、2017年
には分子標的薬ベリムマブが国
内で承認され、治療選択肢は広
がっています。

 治療中は感染症などの副作用
に注意が必要です。田村教授は
「重症になることもあるため、
発熱などの症状が続いたら、早
めに主治医に相談してほしい」
と話しています。また、妊娠・
出産を希望する女性の場合、胎
児に影響のない薬剤を使うこと
や、病状が安定していることな
ど、好ましい条件があるため「
主治医と相談しながら計画的に
進めましょう」とアドバイスし
ています。

全身性エリトマトーデスについ

て解説している動画です。

 
 


 
 
 胎児に害となる病原体と対峙
する。          笑

 
 
 
 
 
 
 
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 
 
 
 
 
 
 
編集後記

 
 
東北大学が7月7日、ガン細胞
のNrf2を抑制するのではなく、
ガン周囲の正常細胞(特に免疫
細胞)においてNrf2を活性化さ
せることで、ガンの進行を抑制
できることを、マウスを用いた
実験で実証したと発表したのは、
素晴らしい業績です。 肺ガン
の約20~30%には、Nrf2が常に
活性化するような遺伝子変異が
生じており、これによりガン細
胞は抗ガン剤治療や放射線治療
に対する抵抗性を獲得すること
が知られていますが、このよう
なNrf2活性化を伴う悪性腫瘍に
対して、ガン細胞におけるNrf2
を抑制する治療法が検討されて
います。しかしNrf2はストレス
から正常細胞を守る役割もある
ため、Nrf2の抑制は副作用の懸
念があり実用化されていません。
それに対し、逆転の発想で免疫
細胞などの正常細胞でNrf2を活
性化すると、腫瘍の進行を抑制
できることが分かりました。
全身性エリテマトーデス(S
LE)は、全身のさまざまな臓
器に炎症を生じる難病です。妊
娠可能な年齢の女性に多く見ら
れる病気で、発熱、倦怠(けん
たい)感に加えて、皮膚の赤い
斑点(紅斑)、関節炎、腎炎と
いった多彩な症状を引き起こす
ことが知られています。治療は、
ステロイド内服薬、免疫抑制薬
などによる薬物療法が中心とな
ることが多いようです。2015年
には海外のSLEの標準治療薬
で、皮膚症状や関節症状に有効
とされるヒドロキシクロロキン、
2017年には分子標的薬ベリムマ
ブが国内で承認され、治療選択
肢は広がっているということで
す。しかし、いずれの治療にし
ても副作用があり、副作用に注
意しながらの投与を余儀なくさ
れます。その点、自己免疫性疾
患の治療法としてのトレハロー
スの投与は使用量さえ適切であ
れば大きな副作用がなく、治療
ができると考えられています。

働く女性を助成する補助金。


 
 
 
 
 
 
 
************************

このメールマガジンは以下の配信システムを利用して
発行しています。
解除の手続きは下記ページよりお願い致します。
「まぐまぐ」www.mag2.com/m/0000121810.html
(イジニイワト)

発行者名  医療法人永徳会 皿沼クリニック院長
藤田 亨
職業    医師の箸くれ(はしくれ)
運営サイト www.eitokukaisalanuma.or.jp/ ご意見・ご感想・励ましのお便りお待ちしております。
sara2162@atlas.plala.or.jp このマガジンの掲載記事を無断で転載・使用すること
を禁じます。

このエントリーをはてなブックマークに追加 
 

コメント

最近の号外Vol.1868メルマガ

2021-06-04 00:57:39

カテゴリー:ブログ



藤田のブログランキングアップにご協力お願いします。
以下のバナーをぽちっとクリックお願いします。


病院・診療所ランキング

 

診療マル秘裏話  号外Vol.1868 令和2年7月31日作成

作者 医療法人社団 永徳会 藤田 亨

 
 
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

 
 
 
 
 
 
 
目次

1)SIRPαに結合する環状ペプチド 貪食作用を上昇
2)オリーブ油主成分であるオレイン酸,大動脈解離を防ぐ

 
 
 
 
 
 
 
 
 
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 
 
 
 医療界のトピックスを紹介するこのメールマガジンは
1週間に1回の割合で発行しています。もっと回数を増や
して欲しいという要望もあるのですが、私の能力のなさ
から1週間に1回が限度となっています。これからも当た
り前の医療をしながら、なおかつ貪欲に、新しい知識を
吸収し読者の皆様に提供してゆきたいと思っております。
不撓不屈の精神で取り組む所存ですのでどうかお許し下
さい。

 
 
 
 
 
 
 
1】 SIRPαに結合する環状ペプチド 貪食作用を上昇

 
 
 
 
 
 
 
 神戸大学は7月8日、マクロフ
ァージ上のSIRPαに特異的に結
合する環状ペプチドを発見し、
そのペプチドが抗体医薬により
誘導されるマクロファージのガ
ン細胞に対する貪食作用を高め
ることを明らかにしたと発表し
ました。これは、同大大学院医
学研究科シグナル統合学分野の
村田陽二准教授、的崎尚教授ら
と、東京大学大学院理学系研究
科の菅裕明教授、大阪大学蛋白
質研究所の中川敦史教授らの研
究グループによるものです。研
究成果は、「Cell Chemical Bi
ology 」にオンライン掲載され
ています。近年、分子標的薬を
用いたガンの治療が行われ、そ
の有効性が示されつつあります。
分子標的薬の中でも、薬剤の製
造コストや副作用の面などから
低分子薬と抗体医薬の特性を併
せ持つ中分子サイズの「環状ペ
プチド」が注目されており、抗
ガン剤や他の薬剤の作用を増強
する薬剤としての利用が期待さ
れています。これまでに、的崎
教授らの研究グループでは、マ
クロファージの細胞膜に存在す
る蛋白質SIRPαとその貪食標的
となるガン細胞の細胞膜に存在
する蛋白質CD47が結合すると、
ガン細胞を標的とする抗体によ
り誘導されるマクロファージの
ガン細胞に対する貪食活性が弱
められ、一方で、SIRPαとCD47
の結合を阻害するとその活性が
高められることを見つけていま
した。

そこで、研究グループは、菅教
授らが先に開発した「RaPID シ
ステム」(環状ペプチドを迅速
かつ安価に同定できる実験系)
を利用し、SIRPαに結合する中
分子サイズの環状ペプチドの探
索を行いました。 これにより、
15個のアミノ酸からなるSIRPα
結合環状ペプチドを見つけまし
た。また、得られたSIRPα結合
環状ペプチドがSIRPαとCD47の
結合を阻害する作用を持つこと
を発見しました。X線結晶構造
解析を行い、環状ペプチドとSI
RPαの結合の様子を捉えた結果、
その阻害メカニズムはSIRPαの
ペプチドとの結合によるダイナ
ミックな構造の変化によるもの
であると考えられました。さら
に研究グループは、SIRPαとCD
47との結合を阻害する能力を持
つSIRPα結合環状ペプチドが、
ガンの治療薬として利用可能で
あるかについて検討を進めまし
た。その結果、ヒトBリンパ腫
由来ガン細胞を標的とする抗体
医薬「リツキシマブ」やマウス
由来のメラノーマ細胞を標的と
する抗体(TA-99 抗体)により
誘導される、ガン細胞に対する
マクロファージの貪食作用を、
SIRPα結合環状ペプチドが高め
ることが確認されました。

加えて、メラノーマ細胞を移植
した腫瘍モデルマウスにTA-99
抗体とSIRPα結合環状ペプチド
を同時に投与した場合、それぞ
れの単独投与に比べ、マウスの
肺に形成されたメラノーマ細胞
の腫瘍結節(メラノーマ細胞の
塊)の数が著明に減少すること
が分かりました。これらのこと
から、少なくともマウスの生体
内では、SIRPα結合環状ペプチ
ドがガン細胞を標的とする抗体
医薬の抗ガン作用を増強するこ
とが示されました。

研究グループは、「今後、有効
性と安全性の高い最適化された
SIRPα結合環状ペプチドを開発
できれば、ガンの新たな治療薬
になることが期待される」と述
べています。

免疫細胞の働きについて解説し

ている動画です。

 
 


 
 
 著明に減少する現象。笑

 
 
 
 
 
 
 
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 
 
 
 
 
 
 
2】 オリーブ油主成分であるオレイン酸,大動脈解離を防ぐ

 
 
 
 
 
 
 
 東京大学は7月8日、脂質を代
謝する酵素群の生体内機能に関
する研究から、血管内皮細胞か
ら分泌される脂質分解酵素が大
動脈の健康を維持する脂肪酸(
オリーブ油の主成分であるオレ
イン酸)を作り出し、大動脈解
離を防ぐ役割を持つことを発見
したと発表しました。この研究
は、同大大学院医学系研究科の
村上誠教授、山梨大学医学部呼
吸器循環器内科の久木山清貴教
授らの研究グループによるもの
です。研究成果は、「Journal
of Biological Chemistry 」に
オンライン掲載され、特に優れ
た論文に与えられる「Editors’
Picks」に選ばれました。 大動
脈解離は大動脈壁の中膜が突然
破断することで発症する疾患で、
日本を含む先進諸国で発症が急
増しています。中高年者の突然
死の原因となることから社会的
影響も大きく、中でも全体の6
割以上を占める胸部上行大動脈
解離は特に予後不良で、院内死
亡率は30%を超え、加えて病院
到着前死亡が相当数存在すると
推定されています。臨床的には、
血圧上昇物質であるアンジオテ
ンシン2(AT-2)が大動脈解離
の主要因の1つとされており、
これまでにAT-2を用いた複数の
マウス大動脈解離モデルを用い
た研究が試みられてきました。
これらの多くは動脈硬化モデル
マウスにAT-2を投与する系が利
用されていますが、臨床的に大
動脈解離は必ずしも動脈硬化と
関連しているわけではなく、ま
たヒトとは異なり腹部大動脈に
解離を発症する点で、最適なモ
デルとは言えません。病変部位
における細胞外マトリックスの
脆弱性が大動脈解離発症の一因
と考えられていますが、ヒトの
臨床病態を反映した胸部上行大
動脈解離を発症する簡便な動物
モデルが存在しないため、発症
機序はほとんど解明されておら
ず、それゆえに疾患の治療方策
は手術以外に皆無でした。解離
発症後の外科的治療には限界が
あることから、発症予測および
内科的治療・予防法の開発が望
まれています。

疫学的に、不飽和脂肪酸の一種
であるオレイン酸を主成分とす
るオリーブ油を豊富に含む地中
海食が動脈疾患の予防に役立つ
と言われていますが、その分子
基盤は不明でした。栄養素とし
て摂取された脂肪酸は細胞膜を
構成するリン脂質に取り込まれ、
必要時にリン脂質分解酵素ホス
ホリパーゼA2(PLA2)の作用に
よりリン脂質から遊離されます。
これまでに、PLA2により遊離さ
れた脂肪酸代謝物が動脈硬化や
心筋梗塞などの循環器疾患に関
わることが報告されていました
が、大動脈解離との関連につい
ての知見はありませんでした。
今回、研究グループはまず、マ
ウス大動脈におけるsPLA2 分子
群の発現を網羅的に解析しまし
た。その結果、sPLA2-V が大動
脈の血管内皮細胞に構成的に高
発現しており、血管内腔表面に
結合していることを見出した。
全身性及び血管内皮細胞特異的
にsPLA2-V を欠損させたマウス
にAT-2を投与すると、わずか数
日のうちに胸部上行大動脈解離
を高率に発症しました。この現
象は他のsPLA2 分子種の欠損マ
ウスでは観察されず、sPLA2-V
欠損マウスに特有の表現型でし
た。sPLA2-V 欠損マウスの胸部
上行大動脈では、炎症関連遺伝
子の発現には変化がありません
でしたが、AT-2刺激によるリジ
ルオキシダーゼ(LOX ;細胞外
マトリックスの主成分であるコ
ラーゲンやエラスチンを架橋す
る酵素)の発現誘導が野生型マ
ウスと比べて有意に低下してい
ました。そこで、sPLA2-V 欠損
マウスの胸部上行大動脈におい
て変動している遊離脂肪酸を脂
質の網羅分析(リピドミクス)
により探索した結果、これまで
に報告のある同酵素の基質特異
性と合致して、リン脂質からの
オレイン酸とリノール酸の遊離
が野生型マウスと比べて減少し
ていました。

細胞外マトリックスの構築を促
進する因子として、TGF-β1が
知られています。培養系におい
て、血管内皮細胞をAT-2で刺激
するとTGF-β1の発現が亢進し、
TGF-β1は血管平滑筋細胞にLO
X の発現を誘導しました。この
LOX の発現誘導は、血管内皮細
胞のsPLA2-V を人為的にノック
ダウン(発現抑制)するか、ま
たはsPLA2 阻害剤を添加するこ
とにより消失し、ここにオレイ
ン酸またはリノール酸を補充す
るとLOX の発現が回復しました。
分子機序として、これらの不飽
和脂肪酸はTGF-β1による小胞
体ストレスを抑制することで、
LOX の発現を増強することが判
明しました。すなわち、LOX の
発現は転写因子GATA3 により負
に制御されており、TGF-β1刺
激により小胞体ストレスが生じ
るとGATA3 の発現が亢進し、LO
X の発現が低下しました。オレ
イン酸やリノール酸は小胞体ス
トレスを緩和することでGATA3
の発現を抑え、結果的にLOX の
発現を上昇させます。

さらに、sPLA2-V 欠損マウスに
オリーブ油含有食(高オレイン
酸食)またはコーン油含有食(
高リノール酸食)を与えると、
大動脈において低下していたLO
X の発現が正常レベルに戻り、
大動脈解離の発症が完全に抑え
られました。以上の結果から、
血管内皮細胞のsPLA2-V はオレ
イン酸やリノール酸の遊離を介
してLOX の発現を増強し、細胞
外マトリックスの架橋を高める
ことで、大動脈壁の脆弱化を防
ぐ役割を持つことが分かりまし
た。今回の研究は、不飽和脂肪
酸(オレイン酸、リノール酸)
の大動脈解離予防効果に新たな
学術的理解を与えるとともに、
大動脈壁の微小環境においてこ
れらの脂肪酸が内因的に動員さ
れるメカニズムの一端を解明し
たもので、オリーブ油に富む地
中海食が血管の健康に良い影響
を及ぼす分子機序の一部を提供
するものです。

sPLA2-V 欠損マウスは、簡便な
処置で高頻度に胸部上向大動脈
解離を誘発できる世界初の心血
管病モデルと言えます。sPLA2-
V による脂肪酸の遊離を賦活化
する戦略は、大動脈解離の新規
予防・治療法の開発につながる
ことが期待されます。 例えば、
血管内皮細胞のsPLA2-V を抗体
あるいは薬剤で安定化させる、
遺伝子治療によりその発現を増
強させる、食生活の改善や健康
食品の摂取を通じて適量のオレ
イン酸やリノール酸を補充する
などの方策が将来の予防・治療
構想として考えられます。また、
血中のsPLA2-V をモニタリング
できる簡易診断法を開発するこ
とで、大動脈解離の発症を予測
できる可能性があります。

大動脈瘤(大動脈解離)につい

て解説している動画です。

 
 


 
 
 
 豊作にする方策を考える。笑

 
 
 
 
 
 
 
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 
 
 
 
 
 
 
編集後記

 
 
 神戸大学が7月8日、マクロフ
ァージ上のSIRPαに特異的に結
合する環状ペプチドを発見し、
そのペプチドが抗体医薬により
誘導されるマクロファージのガ
ン細胞に対する貪食作用を高め
ることを明らかにしたと発表し
たのは、素晴らしい業績です。
SIRPαに結合する中分子分子サ
イズの環状ペプチドの探索を行
い、15個のアミノ酸からなるSI
RPα結合環状ペプチドを見つけ、
得られたSIRPα結合環状ペプチ
ドがSIRPαとCD47の結合を阻害
する作用を持つことを発見した
のは、慧眼でした。ガン細胞に
対するマクロファージの貪食作
用を、SIRPα結合環状ペプチド
が高めることが確認され、その
機序によって、ガン細胞を標的
とする抗体医薬の抗ガン作用を
増強することが示されたのは、
喜ばしいことです。
 東京大学が7月8日、脂質を代
謝する酵素群の生体内機能に関
する研究から、血管内皮細胞か
ら分泌される脂質分解酵素が大
動脈の健康を維持する脂肪酸(
オリーブ油の主成分であるオレ
イン酸)を作り出し、大動脈解
離を防ぐ役割を持つことを発見
したと発表したのは素晴らしい
業績です。sPLA2-V 欠損マウス
は、簡便な処置で高頻度に胸部
上向大動脈解離を誘発できる世
界初の心血管病モデルと言うこ
とですので、sPLA2-V による脂
肪酸の遊離を賦活化する戦略は、
大動脈解離の新規予防・治療法
の開発に是非繋げて頂きたいも
のです。特に、食生活の改善や
健康食品の摂取を通じて適量の
オレイン酸やリノール酸を補充
するという方策が将来の予防・
治療構想として優れているので
はないかと考えられます。

 高層マンションを建てる構想
を練る。         笑

 
 
 
 
 
 
 
************************

このメールマガジンは以下の配信システムを利用して
発行しています。
解除の手続きは下記ページよりお願い致します。
「まぐまぐ」www.mag2.com/m/0000121810.html
(イジニイワト)

発行者名  医療法人永徳会 皿沼クリニック院長
藤田 亨
職業    医師の箸くれ(はしくれ)
運営サイト www.eitokukaisalanuma.or.jp/ ご意見・ご感想・励ましのお便りお待ちしております。
sara2162@atlas.plala.or.jp このマガジンの掲載記事を無断で転載・使用すること
を禁じます。

このエントリーをはてなブックマークに追加 
 

コメント