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2021-07-07 00:01:41

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診療マル秘裏話  号外Vol.1897 令和2年9月3日作成

作者 医療法人社団 永徳会 藤田 亨

 
 
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

 
 
 
 
 
 
 
目次

1)日本における家族性膵臓ガン関連遺伝子を解明
2)潰瘍性大腸炎のIL-26関与,新病態メカニズムを解明

 
 
 
 
 
 
 
 
 
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 医療界のトピックスを紹介するこのメールマガジンは
1週間に1回の割合で発行しています。もっと回数を増や
して欲しいという要望もあるのですが、私の能力のなさ
から1週間に1回が限度となっています。これからも当た
り前の医療をしながら、なおかつ貪欲に、新しい知識を
吸収し読者の皆様に提供してゆきたいと思っております。
不撓不屈の精神で取り組む所存ですのでどうかお許し下
さい。

 
 
 
 
 
 
1】 日本における家族性膵臓ガン関連遺伝子を解明

 
 
 
 
 
 
 
 大阪大学は8月8日、日本にお
ける家族性膵臓ガンの関連遺伝
子を明らかにしたと発表しまし
た。この研究は、同大学大学院
医学系研究科の谷内田真一教授
(前国立ガン研究センター研究
所ユニット長)、東北大学大学
院医学系研究科の古川徹教授(
前東京女子医科大学医学部教授)、
国立ガン研究センター、東京女
子医科大学、杏林大学、みずほ
情報総研株式会社の研究グルー
プによるものです。研究成果は、
米国科学誌「Annals of Surger
y 」に掲載されています。家族
性膵臓ガンは、親子または兄弟
姉妹に2人以上の膵臓ガン患者
さんがいる家系で発症する膵臓
ガンです。米国Johns Hopkins
大学で発足した登録制度「Nati
onal Familial Pancreatic Tum
or Registry(NFPTR)」では、
第一度近親者(父母、兄弟姉妹、
子供)に膵臓ガン発症者がいる
家系とそうでない家系を比較す
ると、前者で10倍近く膵臓ガン
発症率が高いことが2004年に報
告されています。

その後、欧米で疫学調査が進み、
欧米では膵臓ガンの約5〜10%
は、家族性であることが知られ
ています。これまで、谷内田教
授らは疫学調査において、日本
人の膵臓ガン患者1,197 人の家
族歴を調査し、88人(7.3%)で
第一度近親(父母、兄弟姉妹、
子供)に1人以上の膵臓ガン患
者さんがいることを報告してき
ました。欧米では、その原因と
なり得る関連遺伝子の解析が積
極的に行われてきましたが、人
種の異なる日本を含むアジアに
おいては網羅的な解析は行われ
ていませんでした。そのため、
今回の研究では、81人の家族性
膵臓ガン患者さんを対象に生殖
細胞系列の全エクソーム解析を
実施しました。研究の結果、16
%の患者さんにおいて、欧米の
家族性膵臓ガン研究で関連の見
つかった遺伝子(ATM、BRCA2、
MLH1、MSH2、MSH6、PALB2、BRC
A1、TP53)に病原性のある生殖
細胞系バリアントを認めました。
また、これまでに報告のない遺
伝子(ASXL1、ERCC4、TSC2、FA
T1やFAT4)に81人のうち2人以
上で病原性のある生殖細胞系バ
リアントを認めたということで
す。

ATM、BRCA1/2、PALB2 の変異を
有するガンは、PARP阻害剤やプ
ラチナ製剤が効果を示すことが
知られています。2019年には、
世界規模の臨床研究でBRCA1/2
の病原性のある生殖細胞系バリ
アントを有する膵臓ガン患者さ
んにおけるPARP阻害剤の効果が
報告されました。家族性膵臓ガ
ンにおいて、日本でも原因遺伝
子によっては、ガン遺伝子検査
を行うことによって治療選択に
有益な情報が得られる可能性が
あります。また、膵臓ガンの体
細胞系遺伝子変異として高頻度
にみられる、ガン抑制遺伝子の
SMAD4 遺伝子に、病原性のある
生殖細胞系バリアントが1人に
見つかりました。さらに、同患
者さんのガン組織では、体細胞
系の異常としてSMAD4 遺伝子の
欠失がみられ、免疫組織化学染
色でSmad4蛋白の欠損(SMAD4の
2-hit )を確認したということ
です。これらの報告のない遺伝
子バリアントが、ガンの発症や
進行に関係しているかを明らか
にするためには、今後、日本に
おける大規模コホート研究、細
胞株や動物等を用いた実証試験
が必要となります。

一般に、家族性も含む通常型膵
臓ガンでは約90~95%でKRAS遺
伝子の体細胞系変異を認めます。
しかし、同研究の家族性膵臓ガ
ン患者さんのガン組織における
KRAS遺伝子の体細胞系変異は、
81%と低率でした。KRAS変異の
ない患者さんでは、BRCA1、MLH
1、SMAD4の病原性のある生殖細
胞系バリアントやARID1Aの体細
胞系変異を認めており、一部の
家族性膵臓ガンは、通常の膵臓
ガンとは異なる発症機序で発ガ
ンしている可能性が示唆されま
した。

さらに、40歳以下の若年発症の
膵臓ガン患者さん8人の全エク
ソーム解析の結果、MSH2、POLE、
TP53やFAT4遺伝子に、病原性が
ある、あるいはおそらく病原性
と推定される、生殖細胞系バリ
アントを認めました。
今回の研究成果により、日本に
おいても欧米と同様に家族性膵
臓ガン患者さんには、特定の遺
伝子に病原性がある生殖細胞系
バリアントの存在が明らかとな
りました。ガンゲノム医療が始
まりましたが、家族歴の情報は
重要です。今後、膵臓ガン患者
さんの「ガン遺伝子パネル検査」
において、同研究で発見された
遺伝子などの生殖細胞系バリア
ントが見つかる可能性がありま
す。膵臓ガンの家族歴のある膵
臓ガン患者とその担当医師は、
特定の遺伝子に病原性がある生
殖細胞系バリアントがみつかる
可能性を十分に理解した上で、
「ガン遺伝子パネル検査」を行
うことが重要です。一方で、家
族性膵臓ガンにおいては、関連
する遺伝子によっては、特定の
抗悪性腫瘍剤の効果が期待され
る可能性がある、と研究グルー
プは述べています。

今後、家族性膵臓ガンでは、さ
らにAll Japan 体制での大規模
なコホート研究が必要であり、
そのために、日本膵臓学会は家
族性膵ガン登録制度を開始して
います。日本においても、膵臓
ガン克服のために家族性膵臓ガ
ンを正しく知り、対象の方の協
力を得て、原因となり得る関連
遺伝子のさらなる探索、早期診
断や新しい治療法の開発に関す
る研究を行うことが計画されて
います。

膵臓ガンを見逃さない方法につ

いて解説している動画です。

 
 


 
 
 会誌の発刊を開始する。笑

 
 
 
 
 
 
 
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2】 潰瘍性大腸炎のIL-26関与,新病態メカニズムを解明

 
 
 
 
 
 
 
 順天堂大学は8月7日、潰瘍性
大腸炎の新たな病態メカニズム
を解明したと発表しました。こ
の研究は、同大大学院医学研究
科免疫病・ガン先端治療学講座
の波多野良特任助教、森本幾夫
特任教授らと消化器内科学講座
の石川大准教授らの研究グルー
プが英国オックスフォード大学
のAlison Simmons教授らとの国
際共同研究として行ったものま
しです。研究成果は、「Nature
Medicine 」のオンライン版に
掲載されています。

難病指定疾患である潰瘍性大腸
炎は、激しい下痢や血便、強い
腹痛や発熱などを主な症状とし、
増悪と寛解を繰り返す治癒が難
しい自己免疫疾患です。国内で
は、近年毎年1万人の新規患者
さんが発症しており、現時点で
20万人を超え、米国に次いで世
界で2番目に多い状況となって
います。免疫抑制剤や生物学的
製剤の登場により、病状がおだ
やかになる寛解に至る率は飛躍
的に向上したものの、小児や高
齢発症患者には使用しづらく、
さらに治療が長期に及ぶと、免
疫を抑えることで懸念される感
染症等の副作用や、医療費の高
額化などの問題が発生するため、
疾患メカニズムのさらなる解明
と根本的な治療法の開発が求め
られています。

潰瘍性大腸炎では大腸の粘膜層
に存在する免疫CD4T細胞の異常
とともに、免疫CD8T細胞による
組織障害の関与が考えられてい
ますが、どのような免疫反応が
どのように炎症反応に関わって
いるのか不明でした。そこで研
究グループは、潰瘍性大腸炎の
病態メカニズムを明らかにする
目的で、国際共同研究により患
者さんの炎症部位に集積するCD
8T細胞の性状解析と遺伝子の発
現解析を行いました。今回の研
究では、オックスフォード大学
病院で内視鏡検査を受けた潰瘍
性大腸炎患者さんおよび健常者
の大腸生検組織を用いました。
大腸の組織から細胞を抽出し、
細胞を分離するセルソーターを
用いてCD8T細胞を分取した後、
シングルセルRNA シーケンスに
よりCD8T細胞の遺伝子発現パタ
ーンを1細胞レベルで解析しま
した。腸管は食物由来の雑多な
外来抗原やアレルギー起因物質、
病原性微生物などに常に曝され
ている場所であり、全身の免疫
系とは異なる特殊な免疫細胞に
よって独自の生体防御システム
を備えていることが知られてい
ましたが、この解析により、大
腸に局在するCD8T細胞が14もの
非常に多様な細胞集団を形成し
ていることが明らかとなりまし
た。さらに、潰瘍性大腸炎と健
常者の比較を行った所、潰瘍性
大腸炎では大腸に常在するメモ
リーCD8T細胞の割合が著しく減
少していた一方で、IL-26 を産
生するCD8T細胞と活性化した細
胞傷害性CD8T細胞の割合が大き
く増加していることが判明しま
した。IL-26 は免疫細胞が産生
する炎症関連因子の一つで、こ
れまでに主にCD4T細胞によって
産生されることが報告されてい
ましたが、大腸にはIL-26 を産
生するCD8T細胞が存在し、潰瘍
性大腸炎ではその細胞集団が著
しく増加していることが分かり
ました。

以上の結果から、炎症関連因子
IL-26 が大腸ではCD8T細胞によ
っても産生されていることが初
めて明らかとなり、潰瘍性大腸
炎の炎症にIL-26 が大きく関わ
っている可能性が示唆されまし
た。現在、T細胞が原因で慢性
的な大腸炎を発症する潰瘍性大
腸炎の病態を模倣したマウスモ
デルを用いて、大腸炎の発症・
悪化にこのIL-26 産生CD8T細胞
がどのように関わっているか、
病態メカニズムの詳細な解析を
進めています。

研究グループは、慢性的な皮膚
炎症疾患である乾癬において、
IL-26 が炎症を悪化させる因子
であることを明らかにしていま
す。今回発見したIL-26 産生CD
8T細胞の炎症における役割を明
らかにすることで、治癒が極め
て難しい潰瘍性大腸炎やクロー
ン病などの炎症性腸疾患が発症・
悪化するメカニズムのさらなる
解明につながることが期待され
ます。研究グループは、このIL
-26 の作用を抑制することがで
きるヒト化抗体の作製を進めて
おり、IL-26 を標的とした難治
性の自己免疫疾患・慢性炎症疾
患に対する新たな治療法の臨床
応用を目指していくとしていま
す。

潰瘍性大腸炎について解説して

いる動画です。

 
 


 
 
 事故がきっかけで、生活習慣
が乱れ、自己免疫性疾患になる。


 
 
 
 
 
 
 
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編集後記

 
 
 大阪大学は8月8日、日本にお
ける家族性膵臓ガンの関連遺伝
子を明らかにしたと発表したの
は、素晴らしい業績です。膵臓
ガンは、身体の奥に発生するガ
ンであるため、往々にして発見
が遅れ、診断した時には、末期
という患者さんが多いことが知
られています。遺伝子で、膵臓
ガンのリスクが高いと判明すれ
ば、ひたすら健診を受け続ける
ことで、早期発見に努めること
ができると私は、考えています。
是非、日本においても、膵臓ガ
ン克服のために家族性膵臓ガン
を正しく知り、対象の方の協力
を得て、原因となり得る関連遺
伝子のさらなる探索、早期診断
や、新しい治療法の開発に関す
る研究を行うことを計画して頂
きたいものです。
 順天堂大学が8月7日、潰瘍性
大腸炎の新たな病態メカニズム
を解明したと発表したのは偉大
な業績です。炎症関連因子IL-2
6 が大腸ではCD8T細胞によって
も産生されていることが初めて
明らかとなり、潰瘍性大腸炎の
炎症にIL-26 が大きく関わって
いる可能性が示唆されたと言う
ことですが、CD8T細胞の中でも
抑制性のCD8T細胞が増えれば、
逆に潰瘍性大腸炎の症状は良く
なることが予想されます。この
抑制性CD8T細胞は、以前のメル
マガで申し上げたようにある種
の寄生虫が作り出すトレハロー
スという糖分によって増える事
が分かっており抑制性CD8T細胞
の増加によって、一型糖尿病が
動物実験で発症しなくなったと
いう報告があります。 そこで、
潰瘍性大腸炎に対しても寄生虫
に頼るのではなく、トレハロー
スそのものを投与することによ
って改善する可能性があります。

 当分、糖分の摂取は控える。


 
 
 
 
 
 
 
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発行しています。
解除の手続きは下記ページよりお願い致します。
「まぐまぐ」https://www.mag2.com/m/0000121810.html
(イジニイワト)

発行者名  医療法人永徳会 皿沼クリニック院長
藤田 亨
職業    医師の箸くれ(はしくれ)
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