診療マル秘裏話　 号外Vol.1531　令和1年7月4日作成

作者　医療法人社団　永徳会　藤田　亨

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目次

1)腎盂腎炎は腎臓自体に細菌が繁殖した炎症疾患
2)通常遺伝子検査の 100倍超の遺伝子を迅速解析

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医療界のトピックスを紹介するこのメールマガジンは
1週間に1回の割合で発行しています。もっと回数を増や
して欲しいという要望もあるのですが、私の能力のなさ
から1週間に1回が限度となっています。これからも当た
り前の医療をしながら、なおかつ貪欲に、新しい知識を
吸収し読者の皆様に提供してゆきたいと思っております。
不撓不屈の精神で取り組む所存ですのでどうかお許し下
さい。

1】腎盂腎炎は腎臓自体に細菌が繁殖した炎症疾患

腎臓で作られた尿がたまる腎
盂（じんう）や腎臓自体に細菌
が繁殖して起きた炎症を「腎盂
腎炎」といいます。適切な治療
を行わないと、腎臓の働きが低
下するだけでなく、命を落とす
危険もあります。東京慈恵会医
科大学葛飾医療センター（東京
都葛飾区）泌尿器科の清田浩教
授に予防法を含めた注意点を聞
きました。健康な人の尿やその
通り道は無菌ですが、尿の出口
から侵入した細菌が尿道を通っ
て膀胱、尿管をさかのぼり、腎
盂にたどり着いて腎盂腎炎を引
き起こすことがあります。尿道
が短く、性交渉の際に侵入した
細菌が膀胱に達しやすいため、
性的活動期の女性に多いほか、
前立腺の病気などで膀胱の働き
が悪くなった高齢者もかかりや
すいとされています。また、糖
尿病患者やステロイド薬使用者
は重症化しやすいことが知られ
ています。

急性の腎盂腎炎では、38度以
上の高熱が出るほか、感染した
腎臓側の背中をたたくと痛みが
響くのが特徴です。高熱が出る
と多くの人は近くの内科クリニ
ックを受診しますが、発熱に加
えて典型的な症状がある場合は、
腎盂腎炎を想定して泌尿器科か
腎臓内科への受診が望ましいと
されています。

感染を起こす細菌として最も
多いのは大腸菌で、時に死につ
ながることもあります。「尿路
にできた石が感染のきっかけと
なる腎盂腎炎は、抗菌薬の投与
だけでは治りにくく、２～３％
が死亡します。また、膀胱の尿
が腎臓に逆流してしまう先天奇
形がある乳幼児は、感染を繰り
返すため逆流を防ぐ手術が必要
です。感染の背景を把握して、
適切な処置を行わないといけま
せん」と清田教授は言っていま
す。ほとんどの患者さんは適切
な抗菌薬による治療で改善しま
す。ただし、通常の抗菌薬が効
かないタイプの大腸菌が増えて
いる他、大腸菌以外の細菌が原
因の場合もあります。清田教授
は「しっかりと治すには、原因
菌に合わせた抗菌薬を、処方さ
れた１～２週間分すべて飲み切
ってください。１回で完全に治
すことが原則です」と強調して
います。

熱が引いたからと薬を途中で
やめてしまうと、再発を繰り返
し慢性化します。腎盂腎炎が慢
性化すると、微熱程度しか出ず、
痛みも弱いため気付きにくいの
ですが、徐々に腎臓の働きが弱
まり透析に至るケースもあると
いうことです。
清田教授は「膀胱の中に尿を
ためておく時間が長いと、細菌
が繁殖しやすくなります。排尿
すると、尿道をさかのぼろうと
する細菌が洗い流されるので、
水分を多く取り、小まめに尿を
出すことが予防につながります」
とアドバイスしています。

腹部を暴行されて膀胱を損傷
した。笑

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2】 通常遺伝子検査の 100倍超の遺伝子を迅速解析

患者さん毎にガンの遺伝子を
検査し有効な薬を探す「ガンゲ
ノム医療」について、一般的な
遺伝子検査の100 倍を超える数
の遺伝子を迅速に解析する技術
を慶応大学などのグループが開
発しました。近く全国の病院で
検査を提供するということで、
有効な治療薬を探す手がかりが
増えると期待されています。

新しいガン治療の手法「ガンゲ
ノム医療」は患者のガンの遺伝
子を調べ最も適した薬を探すも
ので、今月から標準的な治療で
は効果が見込めなくなった患者
さんなどを対象に、遺伝子検査
に公的な医療保険の適用が始ま
っています。

慶応大学医学部の西原広史教授
らのグループはロボットを使っ
てガン細胞の遺伝子を解析する
際の工程を自動化し、スーパー
コンピューターなどで解析する
技術を開発しました。

これにより２万個に及ぶヒトの
すべての遺伝子を、従来より大
幅に短い４週間ほどで解析でき
るようになったということです。

ガンゲノム医療で使われる一般
的な検査では調べる遺伝子の数
は100 個程度ですが、グループ
では、すべての遺伝子を調べる
検査を実施できるようになった
として、今月中にも慶応大学と
連携する全国の病院で提供を始
めるということです。

保険は適用されないため、100
万円程度の費用がかかりますが、
グループによりますと、すべて
の遺伝子を調べるため、有効な
治療薬を探す際の手がかりが増
えると期待できるという事です。

西原教授は「従来の検査よりも
精度は圧倒的に高く、自分の病
気を深く知りたいという患者に、
受診してほしい」と話していま
す。

高低差を乗り越える工程。笑

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編集後記

腎臓で作られた尿がたまる腎
盂（じんう）や腎臓自体に細菌
が繁殖して起きた炎症を「腎盂
腎炎」というのは、周知の事実
ですが、適切な治療を行わない
と、腎臓の働きが低下するだけ
でなく、命を落とす危険もある
ということを肝に銘じなければ、
なりません。尿道が短く、性交
渉の際に侵入した細菌が膀胱に
達しやすいため、性的活動期の
女性に多いほか、前立腺の病気
などで膀胱の働きが悪くなった
高齢者もかかりやすいとされて
いるので、対象の年齢の人は、
十分注意する必要があります。
特に、尿道が短いという、若い
女性で呼吸循環器の症状を認め
ない場合は、肋骨脊柱角叩打痛
を診る必要があります。女性に
多い理由は、トイレを我慢する
ことにもあるようです。講演会
などで休憩時間には女子トイレ
に列をなして並んでいるという
ことが起こり、トイレを我慢す
るために、水分摂取を控えると
いうことが、更に拍車をかけて
尿路感染症を起こしやすくして
います。
患者さん毎にガンの遺伝子を
検査し有効な薬を探す「ガンゲ
ノム医療」について、一般的な
遺伝子検査の100 倍を超える数
の遺伝子を迅速に解析する技術
を慶応大学などのグループが開
発したのは、偉大な業績です。
しかしながら、今月から標準的
な治療では効果が見込めなくな
った患者さんなどを対象に、遺
伝子検査に、公的な医療保険の
適用が始まったという、限定の
仕方は問題だと思います。でき
れば、標準的な治療をやる前に
行って頂きたいと願う次第です。
それは、標準的治療が歪んでい
るせいです。新刊本にも書きま
したが、工夫のない標準治療は、
患者さんに身体と精神の負担が
重すぎると推測されるからです。
例えば、抗ガン剤治療を昼間に
することで、副作用が顕著にで
るのを工夫して夜間の投与に切
り替えるだけで副作用が激減し
ます。工夫のない標準治療を行
ってボロボロの状態になってか
らの遺伝子検査では治療の活路
を開くという点では遅きに失し
たと思われます。

状態悪化が常態化する。笑

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