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2023-01-18 09:00:47

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診療マル秘裏話  Vol.899 令和3年3月3日作成
作者 医療法人社団 永徳会 藤田 亨

 
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

 
 
 
 
 
目次

1)免疫チェックポイント 阻害剤効果予測方法開発に成功
2)線維芽細胞増殖因子の働き阻害の人工RNA 開発

 
 
 
 
 
 
 
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 医療界のトピックスを紹介するこのメールマガジンは
1週間に1回の割合で発行しています。もっと回数を増や
して欲しいという要望もあるのですが、私の能力のなさ
から1週間に1回が限度となっています。これからも当た
り前の医療をしながら、なおかつ貪欲に、新しい知識を
吸収し読者の皆様に提供してゆきたいと思っております。
不撓不屈の精神で取り組む所存ですのでどうかお許し下
さい。

 
 
 
 
1】 免疫チェックポイント 阻害剤効果予測方法開発に成功

 
 
 
 
 
 北海道大学は2月8日、免疫チ
ェックポイント阻害剤による治
療効果を予測する方法の開発に
成功したと発表しました。この
研究は、同大大学院医学研究院
の小林弘一教授ら、米国テキサ
スA&M大学,MDアンダーソンガン
センターの研究グループによる
ものです。研究成果は、「Scie
ntific Reports」にオンライン
掲載されています。

 免疫チェックポイント阻害剤
は、ヒトの免疫系を活性化する
ことでガン細胞を駆除する治療
薬です。抗PD-1阻害剤、抗CTLA
-4阻害剤の開発に成功した京都
大学の本庶佑教授と米国MDアン
ダーソンガンセンターのジェー
ムズ・アリソン教授は、2019年
のノーベル医学賞を受賞しまし
た。免疫チェックポイント阻害
剤は悪性黒色腫で効果が確認さ
れた後、さまざまなガン種へそ
の適応を拡大しています。

 一方で、課題もあります。第
一に、免疫チェックポイント阻
害剤は非常に高価な治療薬です。
米国においては日本円にして50
00万円近くが免疫チェックポイ
ント阻害剤を用いた治療に必要
となるため、富裕層しか治療を
受けることができない事態とな
っています。日本においては、
日本の健康保険制度を圧迫する
要因になっています。

 第二に、副作用の問題があり
ます。免疫チェックポイント阻
害剤による治療では、免疫関連
有害事象と呼ばれる副作用が単
独使用でおよそ患者さんの4分
の1、抗PD-1阻害剤、抗CTLA-4
阻害剤の2剤併用ではおよそ半
分の患者さんに生じるとされて
います。さまざまな臓器におい
て、自己免疫疾患が起こり得ま
す。免疫チェックポイント阻害
剤の本質が免疫活性を引き起こ
すことにある以上、これらはど
うしても避けられない副作用で
すが、生じる臓器や程度によっ
ては命に関わる重篤な症状にな
ることもあります。

 第三に、必ずしも全ての患者
さんで治療効果が認められる訳
ではありません。悪性黒色腫に
対して抗PD-1阻害剤を単独で使
用した場合、治療効果が認めら
れる患者さんは全体の20~30%
とされています。副作用の頻度
の高さと、高額な治療費を考え
ると、治療前に効果を予測し、
治療効果の可能性があるガン患
者さんのみが免疫チェックポイ
ント阻害剤による治療を受ける
ことが理想的です。この治療予
測の重要性については早くから
認知されており、各国で治療予
測の指標となるような予測因子
(バイオマーカー)の開発が進
められてきました。

 最もわかりやすいバイオマー
カーは、免疫チェックポイント
阻害剤が標的としているPD-1や
CTLA-4などの阻害分子です。こ
れらに関しては多くの研究がな
され、実際臨床上でも使われて
きましたが、信頼度は当初期待
されていたほど高くはなく、こ
れらを測定するだけでは、治療
効果を予測するのは困難です。

 また、ガン細胞を免疫系がガ
ンと認識するにはガン特有の抗
原(ガン抗原)が必要で、ガン
抗原の量が多ければ多いほど、
免疫細胞にガン細胞は捕捉され
やすくなり、実際ガン抗原の量
が多いガンでは免疫チェックポ
イント阻害剤の効果も高まりま
す。ただし、これだけでは治療
予測は困難です。他にもさまざ
まなバイオマーカーが研究され
ていますが、治療予測を立てら
れるだけの信頼性のあるものは
ありません。

 ガン細胞を免疫細胞が攻撃し
て排除するためには、ガンに存
在するガン抗原を免疫細胞が認
識する必要があります。ガン抗
原やウイルス抗原のように細胞
の内部にある抗原を免疫細胞に
見せるための装置は,MHCクラス
1として知られています。 MHC
クラス1を構成する多くの分子
を細胞内で発現させるために必
要なのが、NLRC5 という免疫系
の遺伝子です。

 研究グループは先行研究によ
り、ガン患者さんの多くがNLRC
5 の機能や発現を失うことによ
って、MHC クラス1の発現が低
下し、ガンに対する免疫応答が
低下していることを発見しまし
た。そこで、NLRC5 に注目し、
皮膚ガン患者における治療効果
を解析しました。治療開始時に
NLRC5 の発現が高い皮膚ガンの
患者さんグループでは抗CTLA-4
阻害剤に対する効果が高い頻度
で見られたのに対し、NLRC5 の
発現が低い患者グループでは治
療効果が低くなることが分かり
ました。

 また、NLRC5 の発現をバイオ
マーカーとして、今までに報告
されてきたバイオマーカーの発
現やガン抗原量などと組み合わ
せると、さらに治療効果がある
患者さん群と効果がない患者さ
ん群に分けることが可能になっ
たということです。

 NLRC5 の発現を他のバイオマ
ーカーと組み合わせる手法は、
治療効果予測だけではなく、ガ
ン患者さんの5年生存率の予測
にも効果的であることが判明し
ました。さらに、同様な手法を
抗PD-1阻害剤による治療を受け
た患者さん群でも用いた結果、
抗CTLA-4阻害剤による治療と同
様に、NLRC5 の発現が治療予測
および予後予測のバイオマーカ
ーとなることが分かったとして
います。

 今回の研究成果より、免疫チ
ェックポイント阻害剤治療にお
ける治療効果の効果的な予測が
可能になるということです。開
発された手法を用いることで、
効果の可能性がある患者さんは
免疫チェックポイント阻害剤を
積極的に使用することができま
す。また、効果の可能性がない
と判断された場合には、副作用
などの免疫チェックポイント阻
害剤のマイナス点から解放され、
異なる治療法を選択できるとし
ています。

 「今後は、治療開始時に予測
精度の高いバイオマーカーを測
定して、効果の可能性がある場
合のみに免疫チェックポイント
阻害剤治療を開始するように変
わっていくと考えられる」と研
究グループは述べています。

 免疫チェックポイント阻害剤

について解説している動画です。

 
 


 
 
 
 制度の実効の精度を上げる。


 
 
 
 
 
 
 
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2】 線維芽細胞増殖因子の働き阻害の人工RNA 開発

 
 
 
 
 
 
 千葉工業大学は2月5日、線維
芽細胞増殖因子「FGF5」のはた
らきを阻害する人工RNA(RNAア
プタマー)を開発したと発表し
ました。この研究は、同大先進
工学部 生命科学科の坂本 泰一
教授と、株式会社アドバンジェ
ンの山本昌邦博士、北海道医療
大学の堀内正隆准教授、横浜国
立大学の田中陽一郎博士らとの
共同研究グループによるもので
す。研究成果は、「Scientific
Reports」に掲載されています。
 毛は生えて抜け落ちることを
繰り返しており、この周期を毛
周期と呼びます。この毛周期に
おいて、線維芽細胞増殖因子の
一つである「FGF5」が成長期か
ら退行期へのスイッチとなって
いることが明らかになっていま
す。毛周期の成長期の終わりに、
外毛根鞘とよばれる部位でFGF5
が生産され、これが毛乳頭のFG
F 受容体に結合することで脱毛
が起こると言われています。つ
まり、FGF5が毛乳頭へ働きかけ、
脱毛シグナルを出させているの
です。

 アドバンジェンは、このFGF5
に注目し、FGF5のはたらきを抑
える育毛剤の開発を行ってきま
した。一方、坂本泰一教授らの
グループは、10年以上にわたっ
てアプタマー医薬品の開発のた
めの基礎研究を行ってきており、
アプタマー医薬品が作用するメ
カニズムを明らかにしてきまし
た。現在、アプタマー医薬品は、
次世代型分子標的薬として注目
されており、世界中でさまざま
な疾患に対して前臨床試験、臨
床試験が行われています。そこ
で研究グループは今回、このFG
F5の働きを抑えるRNA アプタマ
ーを開発し、効果の高い育毛剤
を開発することを試みました。

 SELEX法により、7種類のRNA
アプタマーが得られましたが、
それらはFGF5によって誘導され
る細胞増殖を効果的に抑制する
ことが明らかとなりました。RN
A アプタマーとFGF5の結合は非
常に強く、RNA アプタマーが結
合することにより、FGF5はFGF
受容体に結合できなくなること
が分かりました。

 また、RNAアプタマーと他のF
GF蛋白質との相互作用を調べた
所、FGF5以外のFGF には結合し
ませんでした。これは、このRN
A アプタマーがFGF5に対して特
異的に結合することを示してお
り、人体に投与した場合に、他
の蛋白質に作用しない、つまり、
副作用が少なくなることを示し
ています。このアプタマーは、
育毛剤として非常に高いポテン
シャルを持っていることが明ら
かとなりました。

 今回の研究成果により、ヒト
FGF5に特異的に結合するRNA ア
プタマーが開発されました。FG
F5は、一部のガン細胞において
ガン化を促進することが報告さ
れていることから、FGF5によっ
て起こる疾患の治療薬としての
可能性も持っているということ
です。実際に、FGF5と同様のは
たらきを持つFGF2を標的とした
RNA アプタマーは、加齢黄斑変
性症などの治療薬として臨床試
験が行われています。

 研究グループは「生体内での
RNA アプタマーの効果を確認で
きれば、新たな育毛剤や治療薬
となることが期待される」と、
述べています。

 線維芽細胞増殖因子につい

て解説している動画です。

 
 


 
 
 高価な育毛剤の効果を確かめ
る。           笑

 
 
 
 
 
 
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編集後記

 
 北海道大学が2月8日、免疫チ
ェックポイント阻害剤による治
療効果を予測する方法の開発に
成功したと発表したのは、素晴
らしい業績です。今後は、治療
開始時に予測精度の高いバイオ
マーカーを測定して、効果の可
能性がある場合のみに免疫チェ
ックポイント阻害剤治療を開始
するようになると予想されます。
それは、免疫チェックポイント
阻害剤の課題であるポイントの
1高価であること2副作用の問
題があることを克服するために
必要と考えられるからです。
 千葉工業大学が2月5日、線維
芽細胞増殖因子「FGF5」のはた
らきを阻害する人工RNA(RNAア
プタマー)を開発したと発表し
たのは、素晴らしい業績です。
毛周期において、線維芽細胞増
殖因子の一つである「FGF5」が
成長期から退行期へのスイッチ
となっていることが明らかにな
っており、ヒトFGF5に特異的に
結合するRNA アプタマーが開発
されたのは喜ばしいことです。
FGF5は、一部のガン細胞におい
てガン化を促進することが報告
されていることから、FGF5によ
って起こる疾患の治療薬として
の可能性も持っており、育毛剤
の開発とともに、前途有望な悪
性腫瘍の薬となることを期待し
たいと思います。

 大綱案が対抗案により退行し
た。           笑

 
 
 
 
 
 
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(イジニイワト)

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