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2022-06-01 21:58:18

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診療マル秘裏話  Vol.866 令和2年7月15日作成
作者 医療法人社団 永徳会 藤田 亨

 
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目次

1)細胞外小胞による神経膠腫進展機構解明に成功
2)アスピリンがグルタミン代謝を活性化させるメカニズム解明

 
 
 
 
 
 
 
 
 
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 医療界のトピックスを紹介するこのメールマガジンは
1週間に1回の割合で発行しています。もっと回数を増や
して欲しいという要望もあるのですが、私の能力のなさ
から1週間に1回が限度となっています。これからも当た
り前の医療をしながら、なおかつ貪欲に、新しい知識を
吸収し読者の皆様に提供してゆきたいと思っております。
不撓不屈の精神で取り組む所存ですのでどうかお許し下
さい。

 
 
 
 
 
1】 細胞外小胞による神経膠腫進展機構解明に成功

 
 
 
 
 
 
 金沢大学は6月22日、細胞外
小胞による神経膠腫の進展(浸
潤・転移)機構の解明に成功し
たと発表しました。この研究は、
同大ナノ生命科学研究所の華山
力成教授、河原裕憲助教、医薬
保健研究域医学系の中田光俊教
授、筒井泰史特任助教らの研究
グループによるものです。研究
成果は、英国科学誌「Carcinog
enesis」に掲載されています。

近年、免疫・神経・ガンなどさ
まざまな医学研究分野において、
細胞外小胞の研究が進められて
います。細胞外小胞は体内のほ
ぼ全ての細胞が分泌する内因性
の微粒子であり、分泌細胞に特
異的な蛋白質や核酸・脂質など
を含有しています。これらの構
成成分は細胞・疾患ごとに異な
っているため、血液や尿などの
体液から採取した細胞外小胞は、
病気の早期発見や予後診断のバ
イオマーカーとして期待されて
います。また、細胞外小胞はこ
れらの分子を周囲の細胞へと送
り届けることでさまざまな細胞
応答を引き起こし、種々の生命
現象や疾患の発症に関与するこ
とが示されています。

今回、研究グループは、神経膠
腫の進展における腫瘍由来細胞
外小胞の関与を検討しました。
神経膠腫は脳腫瘍の中で最も悪
性度が高く、手術や放射線治療・
抗ガン剤治療を組み合わせた集
学的治療を行った場合であって
も平均生存期間が約2年とされ、
予後が悪いとされています。そ
のため、その進展機構の早急な
解明と新規治療法の開発が望ま
れています。
研究グループはまず、細胞外小
胞の産生に関与する分子を欠損
させた神経膠腫細胞株を樹立し、
その細胞をマウス脳内へと移植
した脳腫瘍モデルマウスを作製
しました。このマウスを用いて
解析した結果、細胞外小胞産生
を抑えることで、脳腫瘍サイズ
が10分の1以下に縮小し、脳内
での浸潤・転移が抑えられ、マ
ウスの生存期間が25%延長する
ことが明らかになったというこ
とです。

さらに、腫瘍が放出した細胞外
小胞が、腫瘍周囲のミクログリ
アに取り込まれ、血管新生の阻
害因子であるトロンボスポンジ
ンの遺伝子発現を低下させるこ
とで、ミクログリアによる血管
新生を促進することが判明しま
した。トロンボスポンジンの遺
伝子発現を低下させる蛋白質WT
1 が、神経膠腫患者の腫瘍由来
細胞外小胞に含有されており、
ミクログリアによる血管新生能
を制御することが示されたとい
うことです。今回の研究により、
神経膠腫において、腫瘍が分泌
する細胞外小胞がミクログリア
による血管新生を増強し、腫瘍
の浸潤・転移を促進する腫瘍微
小環境の構築に関与する分子機
構が明らかになりました。

今後、その制御に関わる細胞外
小胞内のWT1 量の測定により、
神経膠腫の早期発見や予後診断
が可能になると考えられます。
さらに、細胞外小胞の産生やWT
1 蛋白質量を低下させる方法を
研究することで、神経膠腫に対
する新たな治療法の開発へとつ
ながることが期待される、と研
究グループは述べています。

 神経膠腫について解説してい

る動画です。

 
 


 
 
 
 酸性の溶液の産生を試みる。


 
 
 
 
 
 
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2】 アスピリンがグルタミン代謝を活性化させるメカニズム解明

 
 
 
 
 
 関西医科大学は6月22日、大
腸ガン培養細胞を用いた網羅的
遺伝子発現解析(RNA-seq )に
より、アスピリンがグルタミン
代謝を活性化させるメカニズム
を解明したと発表しました。こ
れは京都府立医科大学大学院医
学研究科分子標的予防医学の渡
邉元樹講師、朴将源氏(現:関
西医科大学附属病院がんセンタ
ー助教)らの研究グループによ
るものです。研究成果は、科学
雑誌「Cancers 」に掲載されて
います。抗血小板薬として幅広
く利用されているアスピリンは、
その抗腫瘍効果が近年注目され
ており、ガン予防・治療を目的
としたドラッグ・リポジショニ
ングの最有力候補といわれてい
ます。しかし、消化性潰瘍や出
血傾向など、アスピリンによる
副作用は無視できず、アスピリ
ンの抗腫瘍効果を事前に予測す
るバイオマーカーの探索や、ア
スピリンの抗腫瘍効果をより安
全に、より効果的に高めるため
の併用治療薬の開発が精力的に
進められています。

 ガンゲノム解析の進歩により、
アスピリンの抗腫瘍効果とガン
ゲノムとの関係が明らかとなっ
てきています。とりわけ、大腸
ガンの10~20%を占める「PIK3
CA」遺伝子変異の大腸ガンにお
いて、アスピリンの効果が高い
という臨床データが近年相次い
で報告されていますが、その詳
細なメカニズムに関しては明ら
かにされていません。ガン細胞
は正常細胞と異なり、さまざま
な代謝経路の異常が過剰な細胞
増殖を支えていることが知られ
ています。PIK3CA遺伝子変異ガ
ン細胞においても、アミノ酸代
謝のひとつである、グルタミン
代謝が活性化することから、研
究グループは、「PIK3CA遺伝子
変異によるグルタミン代謝の増
進が、アスピリンの感受性に影
響を与えているのではないか」
との仮説を立て、詳しく調べま
した。はじめに、アスピリンの
効果予測因子として知られるPI
K3CA遺伝子変異の有無や、細胞
培養液中のグルタミンの有無が、
アスピリンの細胞増殖抑制効果
に影響を与えるかについて検証
しました。その結果、PIK3CA遺
伝子変異をもつ大腸ガン細胞は、
培養液のグルタミンを除去する
ことにより、アスピリンの感受
性が低下することを発見しまし
た。

次に、培養液中のグルタミンを
除去した場合に誘導される、ア
ミノ酸代謝のマスターレギュレ
ーターである転写因子ATF4が、
アスピリン処理した場合にも発
現誘導されることを分子生物学
的手法により確認しました。こ
れは、アスピリンがガン細胞の
グルタミン取り込みを促進して
いる可能性を示しています。そ
こで、アスピリン処理が遺伝子
発現におよぼす影響をRNA-seq
を用いて解析したところ、アミ
ノ酸の細胞内への取り込みを司
るトランスポーター蛋白質に関
連する遺伝子群の発現上昇を認
めました。さらに、アスピリン
処理により複数のグルタミン代
謝関連酵素が発現上昇すること
を見出し、これまで知られてい
なかった「アスピリンがATF4の
発現誘導を通じて、ガン細胞内
のグルタミン代謝を活性化させ
る」という新規知見を得ました。
アスピリンを用いたガン予防・
治療に応用するため、PIK3CA大
腸ガン細胞に対して、アスピリ
ンとさまざまなグルタミン代謝
阻害薬を、長期間(1週間)に
わたり併用処理したところ、相
乗的なガン細胞のコロニー形成
抑制効果を認めました。これに
より、アスピリンにより活性化
されたグルタミン代謝が、酸化
ストレスによる耐性や、エネル
ギー代謝回路の活性化を通じて、
ガン細胞の生存に重要であるこ
とが示唆されたとともに、アス
ピリンとグルタミン代謝阻害薬
の併用療法が、アスピリン単剤
治療と比べ、より効果的な治療
選択肢となる可能性を示しまし
た。

今回の研究により、PIK3CA変異
ありの大腸ガンにおいて、グル
タミン枯渇環境ではアスピリン
の抗腫瘍効果が十分に発揮され
ないことが明らかになりました。
また、その分子メカニズムとし
てアスピリンがグルタミン代謝
を活性化することが分かりまし
た。さらには、アスピリンによ
り活性化されたグルタミン代謝
を阻害することで、よりアスピ
リンの抗腫瘍効果を高められる
可能性を示しました。近年、ガ
ン遺伝子解析をもとにした「精
密医療(プレシジョン・メディ
シン)」が注目されています。
「今回の研究で、ガンゲノムの
みを標的とする医療は不十分で、
環境(ガン細胞の代謝環境)に
も注目する重要性が明らかにな
りました。本研究をさらに発展
させることにより、アスピリン
のガン予防・治療効果を最大限
に発揮する治療方法の開発が期
待され、ゲノムと代謝を標的と
した新時代のガン精密医療の実
現に貢献したい」と、研究グル
ープは述べています。

 アスピリンによる抗腫瘍効果

について解説している動画です。

 
 


 
 
 
 八機の戦闘機が、戦闘能力を
発揮する。        笑

 
 
 
 
 
 
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編集後記

 
 金沢大学が6月22日、細胞外
小胞による神経膠腫の進展(浸
潤・転移)機構の解明に成功し
たと発表したのは、素晴らしい
業績です。細胞外小胞産生を抑
えることで、脳腫瘍サイズが10
分の1以下に縮小し、脳内での
浸潤・転移が抑えられ、マウス
の生存期間が25%延長すること
が明らかになったことも信じら
れない程の効果であると思いま
す。トロンボスポンジンの遺伝
子発現を低下させる蛋白質WT1
が、神経膠腫患者さんの腫瘍由
来細胞外小胞に含有されており、
ミクログリアによる血管新生能
を制御することが示されたとい
うことです。今後、その制御に
関わる細胞外小胞内のWT1 量の
測定により、神経膠腫の早期発
見や予後診断が可能になるなら、
神経膠腫の予後改善が為される
のではないかと期待しています。
 ガンゲノム解析の進歩により、
アスピリンの抗腫瘍効果とガン
ゲノムとの関係が明らかとなっ
てきていて、とりわけ、大腸ガ
ンの10~20%を占める「PIK3CA」
遺伝子変異の大腸ガンにおいて、
アスピリンの効果が高いという
臨床データが近年相次いで報告
されているということです。特
定の遺伝子変異でアスピリンの
効果が高いなら、内視鏡検査や
手術などで採取してきた検体で
その遺伝子変異を見つけ次第、
アスピリンと併用薬で治療する
というのは、非常に理に叶った
治療だと考えます。本研究をさ
らに発展させることにより、ア
スピリンのガン予防・治療効果
を最大限に発揮する治療方法の
開発と、ゲノムと代謝を標的と
した新時代のガン精密医療の実
現に大いに期待したいと思いま
す。

 氷滴を標的とする武道。笑

 
 
 
 
 
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