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2021-10-04 20:31:01

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診療マル秘裏話  号外Vol.1975 令和2年12月3日作成
作者 医療法人社団 永徳会 藤田 亨

 
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目次

1)ミトコンドリア呼吸を活性化する物質TLAM発見
2)食道ガンのβ遮断薬使用有無と転帰の関連検討

 
 
 
 
 
 
 
 
 
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 医療界のトピックスを紹介するこのメールマガジンは
1週間に1回の割合で発行しています。もっと回数を増や
して欲しいという要望もあるのですが、私の能力のなさ
から1週間に1回が限度となっています。これからも当た
り前の医療をしながら、なおかつ貪欲に、新しい知識を
吸収し読者の皆様に提供してゆきたいと思っております。
不撓不屈の精神で取り組む所存ですのでどうかお許し下
さい。

 
 
 
 
 
1】 ミトコンドリア呼吸を活性化する物質TLAM発見

 
 
 
 
 
 理化学研究所(理研)は11月
10日、ミトコンドリア呼吸を活
性化する物質として、解糖系律
速酵素の1つであるホスホフル
クトキーナーゼ(PFK1)を阻害
する低分子化合物「tryptolina
mide(TLAM)」を発見したと発
表しました。この研究は、理研
環境資源科学研究センター創薬・
医療技術基盤連携部門創薬シー
ド化合物探索基盤ユニットの小
林大貴研究員(研究当時)、ケ
ミカルゲノミクス研究グループ
の吉田稔グループディレクター、
国立精神・神経医療研究センタ
ー(NCNP)神経研究所疾病研究
第二部の畠山英之研究員(研究
当時)、後藤雄一部長(メディ
カル・ゲノムセンター長)らの
共同研究グループによるもので
す。研究成果は、「Nature Che
mical Biology 」オンライン版
に掲載されています。

 ミトコンドリア病は、ミトコ
ンドリア呼吸機能の低下により、
主に筋肉や神経などエネルギー
を多量に必要とする組織で臨床
症状が現れるだけでなく、解糖
系へのエネルギー依存度が高く
なるため、乳酸アシドーシスが
引き起こされます。エネルギー
生産効率の高い呼吸機能を回復
させることが、ミトコンドリア
病の治療戦略の1つになると考
えられていますが、不完全な呼
吸鎖を活性化することで発生す
る活性酸素種(ROS) が、細胞
にダメージを与えることが懸念
されます。現在、呼吸改善作用
あるいは抗酸化作用を持つ複数
の治療薬候補の有効性や安全性
が、臨床試験で試されている所
ですが、確実な治療法はまだ確
立されていません。そこで、研
究グループは、ケミカルバイオ
ロジーの手法により、ミトコン
ドリア病の新たな治療標的を見
出すことを目的に研究を実施し
ました。

 研究グループは、ミトコンド
リア病で起きているエネルギー
代謝変化に注目しました。ミト
コンドリア病では、呼吸が低下
し解糖系への依存度が高くなっ
ています。この代謝バランスを
正常に近づければ、低下したエ
ネルギー(ATP) 生産性を回復
させ、かつ解糖系の最終産物で
あり、乳酸アシドーシスの原因
となる乳酸の生産量を減少させ
ることができるはずと考えまし
た。そして、このような代謝調
節作用を持つ化合物を、ミトコ
ンドリア病患者さん由来の細胞
の代わりに、同様の解糖系に依
存したエネルギー代謝である「
ワールブルグ効果」を示すガン
細胞を用いて探索することにし
ました。ガン細胞は、エネルギ
ー合成効率が低い解糖系に依存
しているため、低グルコース培
地ではエネルギー不足になり、
細胞死が誘導されます。一方、
ガン細胞のエネルギー代謝バラ
ンスをミトコンドリア呼吸優位
にできれば、エネルギー合成効
率が高まるため、低グルコース
培地での細胞死が抑制されます。

 低グルコース状態を誘起する
2-デオキシグルコースによる細
胞死を抑制する化合物を理研NP
Depo化合物ライブラリーから探
索した結果、活性化合物を見出
し、「tryptolinamide(TLAM)」
と命名しました。代謝解析の結
果、TLAMは、ガン細胞の代謝バ
ランスをミトコンドリア呼吸に
シフトさせることが判明しまし
た。さらに、ミトコンドリア病
の1つであるMELASの患者由来の
変異ミトコンドリアDNA(mtDNA)
(m.3243A>G) を持つサイブリ
ッド(細胞質融合細胞)および
別のMELAS患者さん(m.3243A>G)
細胞由来のiPS 細胞から作製し
た分化細胞においても、同様に
エネルギー代謝を呼吸優位にシ
フトさせることが分かりました。

 次に、TLAMの作用機序を解析
しました。生化学的な解析から、
TLAMはAMP 活性化プロテインキ
ナーゼ(AMPK)の活性化を介し
た脂肪酸分解により、ミトコン
ドリア呼吸を活性化することが
示されました。また、細胞内エ
ネルギー代謝に関わる代謝物質
の網羅的定量解析(定量メタボ
ローム解析)により、TLAMは解
糖系律速酵素ホスホフルクトキ
ナーゼ(PFK1)の活性に影響を
与えていることが示唆されまし
た。これを手掛かりとして、組
換えPFK1蛋白質を用いて検討し
た結果、TLAMがPFK1に直接作用
することで、その酵素反応を阻
害することが明らかとなりまし
た。

 さらに、TLAMによる細胞内エ
ネルギー代謝シフトがPFK1阻害
によりもたらされるのかを調べ
るため、CRISPR/Cas9 技術を用
いてPFK1ノックアウト細胞を作
製しました。その結果、PFK1ノ
ックアウト細胞は、TLAMを与え
た細胞と同様にミトコンドリア
呼吸優位の代謝を示し、またTL
AMを与えても代謝変化が誘導さ
れませんでした。これにより、
TLAMによる細胞内エネルギー代
謝シフトがPFK1阻害によりもた
らされることが確認されました。
解糖系律速酵素であるPFK1を阻
害することで、ミトコンドリア
呼吸機能が増強する理由の1つ
は、AMPKの活性化です。実際、
TLAMを処理したPFK1野生型の細
胞と同様に、PFK1ノックアウト
細胞は、PFK1野生型の細胞に比
べて高いAMPK活性を示すことが
確認されました。

 一方、PFK1は解糖系のゲート
キーパーとなっており、PFK1を
阻害すると、解糖系の側方経路
であるペントースリン酸経路へ
の代謝フローが迂回、増大しま
す。ペントースリン酸経路は、
酸化ストレスに対抗するために
重要なNADPH (還元型ニコチン
アミドジヌクレオチドリン酸)
を産生する経路としても知られ
ています。遺伝学的解析により、
AMPK活性化・脂肪酸分解に加え
て、ペントースリン酸経路の亢
進も、TLAMによるミトコンドリ
ア呼吸増強に必要であることが
示されました。

 最後に、TLAMがミトコンドリ
ア病患者から樹立されたiPS 細
胞の病的な表現型に与える影響
を評価しました。変異したmtDN
A を高頻度で持つiPS 細胞は、
神経幹細胞までは分化できるも
のの、神経細胞にまでは分化で
きません。これはエネルギー消
費の高い神経細胞では、ミトコ
ンドリア機能障害により細胞死
が起きてしまうためと考えられ
ます。実験の結果、TLAMは、m.
3243A>Gあるいはm.3291C>Tのmt
DNAを高頻度に持ったiPS細胞の
神経細胞(NF-H陽性細胞)への
分化障害を改善させることが分
かりました。これは、PFK1を阻
害することで、mtDNA に起因す
るミトコンドリア病の病態を改
善できる可能性を示しています。

 PFK1を阻害することでエネル
ギー代謝がシフトし、ミトコン
ドリア呼吸の低下を改善できる
という今回の研究成果は、細胞
内エネルギー代謝に関する生物
学的知見として極めて重要と言
えます。また、PFK1阻害は、「
ミトコンドリア呼吸だけでなく
アシドーシスを改善する」「ペ
ントースリン酸経路の亢進によ
るNADPH 産生が不完全な呼吸マ
シナリーを活性化することで発
生するROS による細胞ダメージ
を緩和する」ことが期待されま
す。そのため、PFK1阻害はミト
コンドリア病治療の観点から複
数のメリットを持つ、これまで
にない治療標的になり得ます。

 また、ミトコンドリア機能低
下は、ミトコンドリア病だけで
なく、老化、ガン、神経変性疾
患を含むさまざまな疾患に関連
しているため、今回の研究成果
が足掛かりとなって、ヒトの健
康寿命の延伸に資する新しい方
法の開発につながると期待でき
ます。研究グループは、「本研
究は、国際連合が2016年に定め
た17項目の「持続可能な開発目
標(SDGs)」のうち、「3. す
べての人に健康と福祉を」に大
きく貢献する成果だ」と、述べ
ています。

ミトコンドリア病の新しい治療

について解説している動画です。

 
 


 
 
 生家で盛夏に青果を獲得する
成果を上げた。      笑

 
 
 
 
 
 
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2】 食道ガンのβ遮断薬使用有無と転帰の関連検討

 
 
 
 
 
 
 放射線治療を実施した食道ガ
ン患者さん418 例を対象に、β
遮断薬使用の有無と転帰の関連
を検討しました。291 例に術前
補助または根治的化学放射線療
法を実施し、このうち27.8%(
81例)が治療時にβ遮断薬を服
用していました。

その結果、β遮断薬使用者は、
非使用者と比べて遠隔制御(転
移巣の制御)が有意に改善しま
した(22.2% vs. 37.9%、P=
0.035)。Cox回帰分析で、β遮
断薬使用に無増悪生存期間 (P
<0.001、ハザード比0.42、0.2
7-0.66) と全生存期間(OS、P
=0.002、同0.55、0.38-0.81)
の改善と有意な関連が認められ
ました。T病期、N病期、性別、
術前補助療法または根治療法、
カルノフスキーの全身状態スコ
ア、アスピリン使用の有無を傾
向スコアでマッチさせた解析で、
β遮断薬使用に有意な無増悪生
存改善効果が示されました (P
=0.005)。

食道ガンの治療について解説し

ている動画です。

 
 


 
 
 私用でβ遮断薬使用するのは、
認められない。      笑

 
 
 
 
 
 
 
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編集後記

 
 理化学研究所(理研)が11月
10日、ミトコンドリア呼吸を活
性化する物質として、解糖系律
速酵素の1つであるホスホフル
クトキーナーゼ(PFK1)を阻害
する低分子化合物「tryptolina
mide(TLAM)」を発見したと発
表したのは素晴らしい業績です。
ガン細胞は、ミトコンドリアで
発生する活性酸素を恐れて嫌気
性解糖系という酸素を使わない
方法で、エネルギー産生を行っ
ています。ですからミトコンド
リア呼吸が活性化できれば非常
にガン細胞は嫌がるはずです。
ただ一方でガン細胞は、非常に
ずる賢いので、追い詰めたと思
っていても思わぬ逃げ道を作っ
て環境に適応する力があるもの
だと考えていた方が良い様です。
 放射線治療を実施した食道ガ
ン患者さん418 例を対象に、β
遮断薬使用の有無と転帰の関連
を検討したのは素晴らしい業績
です。その結果、β遮断薬使用
者は、非使用者と比べて遠隔制
御(転移巣の制御)が有意に改
善したことが分かりました。ガ
ン治療において、転移巣の制御
ができれば、原発巣の管理だけ
に集中できるので治療が容易に
なるのです。β遮断薬は非常に
有用ですが、使ってはいけない
人(禁忌)もいます。たとえば
重症の気管支喘息の患者さんで
す。気管支を拡張するのは、ア
ドレナリンのβ2受容体の働き
です。その働きを遮断してしま
うと喘息の発作が酷くなる可能
性が高いからです。禁忌を十分
に考慮した上で慎重に使うこと
が医師には、求められます。

 行動の管理を官吏が行う。笑

 
 
 
 
 
 
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