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2021-05-17 23:04:17

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診療マル秘裏話  号外Vol.1854 令和2年7月14日作成

作者 医療法人社団 永徳会 藤田 亨

 
 
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目次

1)ビグアナイド系消毒薬オラネキシジンの耐性菌SSI有効性
2)AR蛋白質分解誘導薬の前立腺ガンの治験有効性

 
 
 
 
 
 
 
 
 
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 医療界のトピックスを紹介するこのメールマガジンは
1週間に1回の割合で発行しています。もっと回数を増や
して欲しいという要望もあるのですが、私の能力のなさ
から1週間に1回が限度となっています。これからも当た
り前の医療をしながら、なおかつ貪欲に、新しい知識を
吸収し読者の皆様に提供してゆきたいと思っております。
不撓不屈の精神で取り組む所存ですのでどうかお許し下
さい。

 
 
 
 
 
 
 
1】 ビグアナイド系消毒薬オラネキシジンの耐性菌SSI有効性

 
 
 
 
 
 
 
 最も一般的な術後合併症であ
る手術部位感染(SSI )。患者
さんの生命予後を大きく左右す
るため、最重要課題の1つとい
えます。SSI 予防策としての外
皮消毒において、日本では主に
ヨウ素系消毒薬が使われてきま
したが、近年はメチシリン耐性
黄色ブドウ球菌(MRSA)などの
耐性菌によるSSI 発生リスクが
指摘されています。こうした中、
耐性菌への有効性が期待される
ビグアナイド系消毒薬オラネキ
シジンが登場しましたが、耐性
菌への有効性をヨウ素系消毒薬
と比較した報告はありませんで
した。そこで慶應義塾大学外科
学(一般・消化器)教室教授の
北川雄光氏らの研究グループは、
ヨウ素系消毒薬とオラネキシジ
ンのSSI 発生予防効果を比較検
討する医師主導型ランダム化比
較試験(RCT )を実施しました。
オラネキシジン投与群でSSI 発
生が半減したと、Lancet Infec
t Dis (2020年6月15日オンラ
イン版)に発表しました。北川
氏らによると、これまでSSI 予
防策として手術部位の外皮消毒
にはアルコール系およびヨウ素
系消毒薬が用いられてきました
が、前者は電気メス使用による
引火の危険性が報告されており、
後者についてはMRSAやバンコマ
イシン耐性腸球菌(VRE )など
の耐性菌によるSSI の発生が指
摘されていたということです。
耐性菌への強力な殺菌効果およ
び速効性が認められるオラネキ
シジンが2015年に発売されまし
たが、ヨウ素系消毒薬との比較
検討が行われていなかったこと
から、同氏は医師主導型RCT を
実施しました。

 慶應義塾大学、東京都済生会
中央病院、東京医療センター、
川崎市立川崎病院の4施設にお
いて、2018年6月〜19年4月に消
化器外科領域(食道、胃、十二
指腸、小腸、大腸、肝、胆道、
膵)で創分類Class-2(準清潔
創)の全身麻酔手術を施行した
20歳以上の患者さん587 例が対
象となりました。ヨウ素系消毒
薬投与群293 例、オラネキシジ
ン投与群294 例にランダムに割
り付け、術後30日間のSSI 発生
(主要評価項目)、および表層
切開創SSI 、深層切開創SSI 、
臓器・体腔SSI の発生(副次評
価項目)などについて検討しま
した。解析の結果、術後30日間
におけるSSI 発生件数は、ヨウ
素系消毒薬投与群の39例に対し、
オラネキシジン投与群では19例
と有意に半減しました〔リスク
比(RR)0.48(90%CI 0.30〜0.
74)、P=0.002)。表層切開創
SSIについても同様でした(P=
0.03)。今回の結果を受けて、
北川氏らは「オラネキシジンは、
従来用いられてきたヨウ素系消
毒薬と比べて、SSI を有意に低
減することが明らかになり、高
いエビデンスを世界に向けて発
信することができた」と結論づ
けました。「手術部位消毒は簡
便に施行できる最も基本的なSS
I 予防策であり、今回の結果は
消化器外科領域だけでなく、産
婦人科や整形外科など幅広い領
域の手術においても有用」と総
括しています。

手術部位感染について解説して

いる動画です。

 
 


 
 
 同様に、一同動揺した。笑

 
 
 
 
 
 
 
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2】 AR蛋白質分解誘導薬の前立腺ガンの治験有効性

 
 
 
 
 
 
 
 近年、標的蛋白の分解を誘導
するproteolysis targeting ch
imeras(PROTAC:蛋白質分解誘
導薬)が注目されています。米・
Smilow Cancer Center/Yale U
niversityのDaniel P. Petryla
k 氏らは、アンドロゲン受容体
(AR)を標的とした蛋白質分解
誘導薬であるARV-110 の第1相
試験について、中間解析結果を
第56回米国臨床腫瘍学会(ASCO
20 Virtual Scientific Progra
m、5月29~31日、ウェブ開催)
で報告しました。アンドロゲン
除去療法(ADT )併用化学療法
や第二世代抗アンドロゲン薬は
転移性前立腺ガンに対する標準
療法ですが、AR遺伝子の増幅や
点突然変異、腫瘍内のテストス
テロン産生などにより去勢抵抗
性を獲得します。そのため、こ
れらの耐性経路を克服できる新
たなAR標的療法が求められてい
ます。

 従来の薬剤(低分子化合物)
は標的蛋白の阻害または作動を
介して薬効を発揮するのに対し、
蛋白質分解誘導薬は標的蛋白そ
のものを分解するという従来薬
とは全く異なる機序を有してい
ます。

 ユビキチン‐プロテアソーム
系は恒常性の維持に不可欠な細
胞内蛋白質分解系ですが、蛋白
質分解誘導薬はこの系を用いて
標的蛋白の分解を誘導します。
ARV-110は野生型および変異型A
R(T878A、H875Y、F877L、M895
V)の分解を誘導し、in vivoの
検討ではARを9割以上分解した
ことが示されています。一方で、
L702H 変異またはAR遺伝子のsp
lice variant-7 (AR-V7)に対
しては分解誘導を示しませんで
した。今回の検討はARV-110 に
おけるfirst-in-human試験であ
り、第二世代抗アンドロゲン薬
(アビラテロンまたはエンザル
タミド)を含む2つ以上の治療
歴を有する転移性去勢抵抗性前
立腺ガン(mCRPC )患者さんを
対象に、3+3デザインにより最
大耐用量(MTD)および第2相試
験の推奨用量を検討しました。
また、副次評価項目として薬物
動態および抗腫瘍作用、探索的
評価項目として血中循環腫瘍DN
A(ctDNA)、腫瘍組織生検中の
AR発現、血中循環腫瘍細胞(CT
C)中のARおよびARの変異体(A
R-V7)などのバイオマーカーの
検出が実施されました。

 今回の中間解析は、予定され
ている36例のうち22例における
報告です。年齢中央値は67.5歳
で全例がアビラテロンによる治
療を受けていた。エンザルタミ
ドの投与率は77%、化学療法施
行率は77%で、レジメン数中央
値は6でした。

 主な有害事象は悪心、下痢、
倦怠感、ALT増加、AST増加、リ
ンパ球数減少、嘔吐でグレード
1/2が多かったのですが、投与
量の増加に伴い発現頻度は増加
しました。2例がロスバスタチ
ンを併用しており、1例は用量
制限毒性(グレード3/4のALT/
AST 増加および腎不全)が認め
られました。もう1例はグレー
ド3のALT/AST増加を来しまし
たが、ARV-110 とロスバスタチ
ンの中止により改善し、ARV-11
0 のみの再投与後は毒性を来す
ことなく治療を継続できました。

 その後の検討により、ARV-11
0 は薬剤排出トランスポーター
蛋白(breast cancer resistan
ce protein;BCRP)を介したロ
スバスタチンの排出を阻害する
ことが明らかとなり、試験参加
時のロスバスタチン投与は禁止
されました。アトルバスタチン
を含む他のスタチンを併用して
いた6例では、ALT/AST増加は
認められませんでした。

 ARV-110 の血中濃度は用量依
存的に上昇し、血中濃度-時間
曲線下面積(AUC )および最高
血中濃度(Cmax)に基づく検討
から、140mg/日投与により前臨
床試験と同様の抗腫瘍活性が示
されました。280mg/日を6週間
投与後の腫瘍組織生検をベース
ラインと比較した結果、ARの減
少が肉眼的に観察されました。

 安全性評価が可能であった20
例中2例で50%以上の前立腺特
異抗原(PSA)値の低下(PSA奏
効)が認められ、うち1例はRE
CIST基準による奏効が認められ
ました。140mg/日以上を投与し
た12例においてAR遺伝子との関
連を見た所、PSA 奏効が認めら
れた2例はアビラテロンとエン
ザルタミドの耐性に関連するT8
78AとH875Yの変異を有していま
した。一方、L702H 変異または
AR-V7 が認められた症例ではPS
A 値の低下は乏しいという結果
がでました。これらの結果を踏
まえ、Petrylak氏は「今回示さ
れたARV-110 の安全性および薬
物動態データは、さらなる用量
漸増の妥当性を担保するもので
あり、推奨用量の確定後に第2
相試験へと進行する予定である」
と結論しました。

標的蛋白質の分解について解説

している動画です。

 
 


 
 
 
 装甲車を出したことが、要人
警備に奏功した。     笑

 
 
 
 
 
 
 
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編集後記

 
 
 SSI 予防策としての外皮消毒
において、日本では主にヨウ素
系消毒薬が使われてきましたが、
近年はメチシリン耐性黄色ブド
ウ球菌(MRSA)などの耐性菌に
よるSSI 発生リスクが指摘され
ています。こうした中、耐性菌
への有効性が期待されるビグア
ナイド系消毒薬オラネキシジン
が登場しましたが、耐性菌への
有効性をヨウ素系消毒薬と比較
した報告は、なかったというの
は信じられません。最も売りの
所の比較データがないというの
は困ったことです。その困った
状態を医師主導臨床試験で有意
差を出したということは、素晴
らしい業績です。
 アンドロゲン受容体(AR)を
標的とした蛋白質分解誘導薬で
あるARV-110 の第1相試験につ
いて、中間解析結果を第56回米
国臨床腫瘍学会(ASCO20 Virtu
al Scientific Program、5月29
~31日、ウェブ開催)で報告し
たのは、将来有望な薬剤を選択
して臨床試験を行っているとい
うことを暗に示していると思い
ます。L702H 変異またはAR-V7
が認められた症例ではPSA 値の
低下は乏しいという結果が出た
のは残念ですが、事前にARの変
異を調べておいて、前述の変異
のあるものには、使わないとす
ることが必要だと思われます。

 家事では、洗濯を選択した。


 
 
 
 
 
 
 
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