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2021-03-04 21:38:43

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診療マル秘裏話  号外Vol.1790 令和2年5月1日作成

作者 医療法人社団 永徳会 藤田 亨

 
 
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目次

1)コヒーシン遺伝子変異による,白血病発症機序を解明
2)OISTが,フレイルと相関する15個のメタボライトを発見す

 
 
 
 
 
 
 
 
 
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 医療界のトピックスを紹介するこのメールマガジンは
1週間に1回の割合で発行しています。もっと回数を増や
して欲しいという要望もあるのですが、私の能力のなさ
から1週間に1回が限度となっています。これからも当た
り前の医療をしながら、なおかつ貪欲に、新しい知識を
吸収し読者の皆様に提供してゆきたいと思っております。
不撓不屈の精神で取り組む所存ですのでどうかお許し下
さい。

 
 
 
 
 
 
 
1】 コヒーシン遺伝子変異による,白血病発症機序を解明

 
 
 
 
 
 
 
 京都大学は4月8日、コヒーシ
ン遺伝子変異による白血病発症
の機序を解明したと発表しまし
た。この研究は、同大医学研究
科の小川誠司教授、越智陽太郎
特定助教、マサチューセッツ工
科大学の鈴木洋客員研究員、東
京大学の白髭克彦教授、宮野悟
教授らの研究グループによるも
のです。研究成果は、「Cancer
Discovery」のオンライン版に
掲載されています。研究グルー
プはこれまでの研究で、次世代
シーケンサーによる大規模な遺
伝子解析により、急性骨髄性白
血病や骨髄異形成症候群の10~
20%にコヒーシン遺伝子変異が
認められることを報告していま
す。このコヒーシンは、遺伝子
のエピジェネティックな制御に
おいて中心的な役割を果たすこ
とが近年次々と明らかになり、
分子生物学の領域でも盛んに研
究が行われるホットトピックの
1つとなっています。 しかし、
コヒーシンに異常が生じたとき
に、なぜ白血病を発症するのか
は分かっていませんでした。ま
た、コヒーシン遺伝子のうちの
1つ、STAG2遺伝子が最もよく変
異を起こしますが、このSTAG2
変異は高頻度に他の遺伝子変異
と共存することも分かってきま
した。しかし、複数の遺伝子変
異が発ガンを誘導する機序も大
部分が不明なままです。今回研
究グループは、まず遺伝子変異
同士がどのような共存関係にあ
るかを明確にするため、3,047
例の急性骨髄性白血病や骨髄異
形成症候群の症例の大規模なゲ
ノム解析を実施しました。その
結果、一部の白血病において、
エピジェネティックな制御に関
わるとされるSTAG2、RUNX1、SR
SF2、ASXL1の4つの遺伝子変異
がきわめて高頻度に共存し、さ
らに、これらの遺伝子変異が複
数認められる場合には、著しく
生存率が低く難治性であること
が分かりました。このことから、
これらの遺伝子変異が、白血病
の進展に協調的に作用する可能
性が考えられました。

次に、これらの遺伝子変異を特
徴とする白血病発症の分子機序
を解明するため、まずStag2 ノ
ックアウトマウスを作製して解
析しました。その結果、さまざ
まな血液細胞の機能の異常が認
められましたが、Stag2 遺伝子
単独の異常では白血病などのが
んの発症には至りませんでした。
さらに、このマウスでは、造血
幹細胞の機能に重要な転写因子
Runx1 の活性が上昇しているこ
とが分かりました。ゲノム解析
での知見であるSTAG2 とRUNX1
の協調関係が改めて予想される
結果になったことから、この2
つの遺伝子間の相互機能をさら
に究明することとし、Stag2 と
Runx1 の両遺伝子のノックアウ
トマウスを作製して解析しまし
た。その結果、予想された通り、
両遺伝子のノックアウトマウス
は、単独の遺伝子ノックアウト
マウスに比べ、一段と血液細胞
の機能に異常を起こし、最終的
に骨髄異形成症候群を発症しま
した。こうしたコヒーシンSTAG
2とRUNX1の異常がどのように白
血病を引き起こすかを解明する
ために、RNA シーケンス、ChIP
シーケンス、ATACシーケンス、
Hi-Cといった、次世代シーケン
サーを用いた最新のエピジェネ
ティック解析を統合的に実施し
ました。その結果、Stag2とRun
x1両遺伝子のノックアウトマウ
スでは、非常に広範な遺伝子発
現や転写因子の活性の異常が生
じるほかに、染色体3次元構造
において、エンハンサー・プロ
モーター間のループ形成が弱ま
っていることが分かりました。
そして、このループ形成の異常
が、転写一時停止の程度の強い
遺伝子の発現低下に帰結すると
いう新規の法則性も明らかとな
りました。こうした遺伝子発現
の異常は、コヒーシン変異のあ
る白血病症例でも実際に認めら
れ、さらにRUNX1、SRSF2、ASXL
1 などの遺伝子変異が加わるこ
とで、より顕著になることも確
認されました。このように、コ
ヒーシン遺伝子に変異が生じる
と、染色体の3次元構造の変化
などのエピジェネティックな異
常が生じ、さらにRUNX1 などの
遺伝子変異が追加されることで
一段と異常が蓄積し、白血病を
発症するという一連の機序が解
明されました。

今回の研究成果により、白血病
の10~20%と高頻度に認められ
るコヒーシン遺伝子変異の役割
を詳細に解明し、染色体3次元
構造の異常が白血病発症に重要
であることが示唆されました。
さらに、こうした異常は、コヒ
ーシンのみでなく、その他の特
定の遺伝子変異が加わることで
一段と悪化することも分かりま
した。そのため、今後は遺伝子
変異による染色体3次元構造の
変化や、複数遺伝子変異による
協調作用などを、より幅広く解
析することが重要となっていく
ものと考えられています。また、
今回の研究で新たにわかったコ
ヒーシンの機能に関しては、分
子生物学領域における基礎研究
の進展にも重要な手がかりを与
えるものと期待されています。
近年はエピジェネティックな異
常を標的とした新規薬剤も多数
登場しています。研究グループ
は、今回の研究で解明された染
色体3次元構造の異常などの一
連の機序を手がかりとして、新
しい治療・予防法を求めて研究
を行っていくとしています。

白血病幹細胞を標的とする低分

子化合物について解説している

動画です。

 
 


 
 
 
 以上のような、3次元構造の
異常が認められた。    笑

 
 
 
 
 
 
 
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2】 OISTが,フレイルと相関する15個のメタボライトを発見す

 
 
 
 
 
 
 
 沖縄科学技術大学院大学(OI
ST)は4月7日、「フレイル(虚
弱)」と相関する15個のメタボ
ライトを発見したと発表しまし
た。これは、同大G0細胞ユニッ
トの柳田充弘教授と照屋貴之博
士、京都大学大学院医学研究科
高齢者医療ユニットの亀田雅博
医師、近藤祥司准教授との共同
研究によるものです。研究成果
は、「PNAS」(米国科学アカデ
ミー紀要)に掲載されています。
社会の高齢化が世界規模で進展
することに伴い、フレイルなど
の加齢性疾患も増加しており、
全世界では1億2,000万人の65歳
以上の高齢者がフレイルである
と推定されています。フレイル
は、身体機能だけでなく、認知
機能の低下も含んでおり、さま
ざまな社会問題を引き起こす原
因ともなっています。フレイル
の人々は活動範囲が狭いため、
世間の目が届かないことが多い
とされています。フレイル状態
になると歩行困難や記憶力の低
下に苦しみ、ゴミ出しや掃除な
どの生活に必要な作業が難しく
なります。そのため、健康な人
よりも多くのサポートが必要に
なります。フレイルは、治療に
より健康な状態に戻る可能性が
あるといわれていますが、その
治療法はまだ確立されていませ
ん。研究グループは、フレイル
治療に必要なことは、効率的な
フレイルの診断方法を開発する
ことと考え、75歳以上の高齢患
者さん19人を対象に研究を行い
ました。
はじめに、対象患者さんについ
て、認知機能を測定する「Edmo
nton frail scale (EFS)」、「
Montreal cognition assessmen
t (MoCA-J)」、運動能力を測定
する「Timed Up and Go Test (
TUG)」という3つの臨床検査を
実施しました。その結果、19人
中9人がフレイルに該当するこ
とが分かりました。健康状態や
気分、短期記憶、その他の兆候
も示されたことで、誰がフレイ
ルの状態にあるのかがはっきり
と分かったということです。ま
た、フレイルに該当しなかった
残りの10人についても、一部の
人には認知機能の低下や、運動
機能の低下が起こっていること
が確認されました。

次に、同じ19人の患者から血液
を採取し、メタボライト(血液
を構成するアミノ酸、糖、ヌク
レオチドなどの小分子)を詳し
く調べました。131 個のメタボ
ライトを分析し、そのうち22個
がフレイル、認知機能低下およ
び可動性の低下に関連している
ことを突き止めました。これら
の病態を持つ患者さんは、22個
のメタボライトのほとんどの数
値が低い傾向でした。

同定された22個のメタボライト
は、抗酸化やアミノ酸、筋肉、
窒素代謝などに関連しています。
そのうち15個はフレイルと相関
し、6個は認知機能の低下を、
12個は運動機能の低下を示しま
した。フレイルと相関するメタ
ボライトで、認知機能マーカー
と重複したのは5個、運動機能
マーカーと重複したのは6個で
した。特に、フレイルの患者さ
んでは、抗酸化成分であるエル
ゴチオネインの値が低下してい
ることが分かりました。また、
この22個のメタボライトには、
同研究グループが2016年に報告
した健康な人の老化マーカーの
一部が含まれていました。この
ことは、血液バイオマーカーを
測定することにより、個人の間
で異なる生物学的な老化強度を
老齢初期よりモニターできるこ
とを示唆しています。

本研究から、他の加齢性疾患と
比較しても、フレイルは特異的
な代謝物プロファイルを持って
いることが明らかになりました。
これらのメタボライトとフレイ
ルの症状との関連性を示した今
回の発見は、フレイルの診断お
よび治療の新たなアプローチに
つながる可能性があります。「
血液検査という簡単な方法で、
軽度な段階から診断を開始する
ことができ、早期介入によって
健康寿命を延ばすことが可能に
なるかもしれない」と、照屋博
士は述べています。

なお、OISTと京都大学はこの研
究による発見に関して、共同で
特許を出願しています。

フレイルについて解説している

動画です。

 
 
 


 
 
 簡単な方法に感嘆する。笑

 
 
 
 
 
 
 
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編集後記

 
 
 京都大学が4月8日、コヒーシ
ン遺伝子変異による白血病発症
の機序を解明したと発表したの
は、素晴らしい業績です。白血
病の発症機序には、色々ありま
すが、良く知られた転座を除け
ば、余り良く分かっていないと
いうのが本当の所だと思います。
良く知られた転座としては慢性
骨髄性白血病のフィラデルフィ
ア染色体が有名です。この染色
体は、慢性骨髄性白血病および
一部の急性リンパ性白血病に見
られる染色体の異常です。22番
染色体と9番染色体間での転座
によって、c-ablとbcrという遺
伝子が融合し、異常な蛋白質を
生じます。造血幹細胞を無制限
に増殖させるようになります。
 沖縄科学技術大学院大学(OI
ST)が4月7日、「フレイル(虚
弱)」と相関する15個のメタボ
ライトを発見したと発表したの
は、偉大な業績です。フレイル
の定義は、わかりやすく言えば
「加齢により心身が老い衰えた
状態」のことです。しかしフレ
イルは、早く介入して対策を行
えば元の健常な状態に戻る可能
性があります。高齢者のフレイ
ルは、生活の質を落とすだけで
なく、さまざまな合併症も引き
起こす危険があるということな
ので、正確に診断して早期治療
に持ち込む必要があるのは万人
の認めるところだと思います。
血液検査という簡単な方法で、
軽度な段階から診断を開始する
ことができ、早期介入によって
健康寿命を延ばすことを期待し
たいと思います。

 高齢者の恒例行事。笑

 
 
 
 
 
 
 
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