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2021-01-28 22:52:06

カテゴリー:ブログ



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診療マル秘裏話  号外Vol.1760 令和2年3月27日作成

作者 医療法人社団 永徳会 藤田 亨

 
 
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

 
 
 
 
 
 
 
目次

1)ガン診断や、治療効果を予測可能な分子の同定
2)血管内皮幹細胞を高効率分離できる方法を確立

 
 
 
 
 
 
 
 
 
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 医療界のトピックスを紹介するこのメールマガジンは
1週間に1回の割合で発行しています。もっと回数を増や
して欲しいという要望もあるのですが、私の能力のなさ
から1週間に1回が限度となっています。これからも当た
り前の医療をしながら、なおかつ貪欲に、新しい知識を
吸収し読者の皆様に提供してゆきたいと思っております。
不撓不屈の精神で取り組む所存ですのでどうかお許し下
さい。

 
 
 
 
 
 
 
1】 ガン診断や、治療効果を予測可能な分子の同定

 
 
 
 
 
 
 
 新潟大学は3月3日、卵巣成熟
嚢胞性奇形腫から発生したガン
に対する網羅的な遺伝子解析を
行い、ガンの診断や治療効果を
予測する可能性のある分子とし
て「XCL1」を同定したと発表し
ました。これは、同大大学院医
歯学総合研究科産科婦人科学分
野の榎本隆之教授、吉原弘祐助
教、田村亮助教らの研究グルー
プを中心とした国内多施設共同
研究によるものです。研究成果
は、Nature publishing group
の「Oncogene」に掲載されてい
ます。卵巣成熟嚢胞性奇形腫は、
最も頻度が高い良性の卵巣腫瘍
で、1~2%の割合でガン化する
といわれています。有効な治療
法が確立していないため、ガン
が進行した状態で見つかると非
常に予後が悪いとされています。
まれな疾患で、術前に診断する
ことも難しく、臨床検体を用い
た研究やガン化のメカニズムは
依然として不明です。また、卵
巣成熟嚢胞性奇形腫から発生し
たガンの約80%が扁平上皮ガン
です。卵巣成熟嚢胞性奇形腫は、
別の言い方で皮様嚢腫(デルモ
イドシスト)と呼ばれるように、
ほとんどの症例が皮膚のような
上皮を含んでおり、その皮膚様
組織からガンが発生することが
多いと考えられていました。

そこで研究グループは、卵巣成
熟嚢胞性奇形腫から発生したが
んと診断された患者さんに研究
参加の同意を得た上で、手術時
に採取したガン組織の遺伝子解
析を実施しました。具体的には、
採取した組織からDNAおよびRNA
を抽出し、その塩基配列を次世
代シーケンサーで網羅的に読み
取り、遺伝子異常(遺伝子変異、
コピー数変異、融合遺伝子など)
の同定や網羅的遺伝子発現解析
を行いました。また、遺伝子発
現データに基づいた同疾患の特
徴を明らかにするため、「The
Cancer Genome Atlas(TCGA)D
ata Portal」、「Gene Express
ion Omnibus(GEO)」に登録さ
れているさまざまな臓器から発
生した2,316 例のガンの遺伝子
発現データと比較しました。そ
して、網羅的な遺伝子解析で同
定した結果について、免疫染色
を用いて追加検討を行いました。
解析の結果、同疾患においてが
ん抑制遺伝子であるTP53、ガン
遺伝子であるPIK3CAが高頻度に
変異していることが明らかにな
りました。また、発ガンやガン
の進展に重要な経路であるPI3K
-AKTmTOR pathwayやCell cycle
pathwayに関わる遺伝子が、高
頻度に遺伝子異常を起こしてい
ることも分かりました。さまざ
まな臓器から発生した扁平上皮
ガンと遺伝子発現パターンを比
較したところ、これまで発生母
地として有力と考えられていた
皮膚から発生した扁平上皮ガン
よりも、肺から発生した扁平上
皮ガンに類似していることが確
認されました。

さらに、同疾患と他部位から発
生した扁平上皮ガンの遺伝子発
現を比較し、発現差が顕著な遺
伝子として「XCL1」を同定しま
した。XCL1はリンパ球の活性化
に重要な役割を持っていること
が報告されている遺伝子です。
そこで、免疫療法の効果を予測
する有力なバイオマーカーであ
る、CD8 リンパ球浸潤、腫瘍で
のPD-L1 発現を確認したところ、
XCL1発現は両方と有意に相関し
ていることが分かりました。つ
まり、XCL1高発現により、CD8
リンパ球浸潤が起こり、それに
反応してガンがPD-L1を発現し、
免疫逃避状態を呈していると推
察されるということです。

今回の研究の最も重要な点は、
卵巣成熟嚢胞性奇形腫から発生
した扁平上皮ガンが、特徴的XC
L を高発現しており、免疫逃避
に関与している可能性が明らか
になったことです。「PD1-PDL1
による免疫逃避状態にある予後
不良な本疾患に対して、PD1/PD
L1抗体を用いた免疫療法が有効
であろうと考えます。今後、細
胞株や動物モデルを用いて本研
究成果を検証し、また多施設共
同研究によって、卵巣成熟嚢胞
性奇形腫から発生した扁平上皮
ガンの臨床病理学的データを大
規模に集積して本研究成果を検
証することで、本疾患に対する
免疫療法の適応拡大を目指す」
と、研究グループは述べていま
す。

卵巣成熟嚢胞性奇形腫につい

て解説している動画です。

 
 


 
 
 頭皮の話題から逃避した。笑

 
 
 
 
 
 
 
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2】 血管内皮幹細胞を高効率分離できる方法を確立

 
 
 
 
 
 
 
 大阪大学微生物病研究所は3
月3日、血管内皮幹細胞を高効
率に分離できる方法を確立した
と発表しました。この研究は、
同研究所の内藤尚道准教授と高
倉伸幸教授らの研究グループに
よるものです。研究成果は、「
Nature Protocols」にオンライ
ンで掲載されています。血管の
内腔は、一層の扁平な形をした
血管内皮細胞によって覆われて
います。臓器が傷害を受けて低
酸素状態になると、血管内皮細
胞が増殖を開始し、新たな血管
が作られます(血管新生)。血
管新生は傷害された組織が修復
されるために必須ですが、ガン、
炎症、線維化、動脈硬化巣の形
成、さらには脂肪形成に至るま
で、さまざまな病態にも深く関
与しています。そのため、血管
新生を制御する分子メカニズム
の解明は、病態を理解して治療
法を開発する上で重要となりま
す。血管新生の制御メカニズム
は、近年非常によく研究され、
その結果、血管新生を誘導する
増殖因子(血管内皮増殖因子)
の作用を阻害する薬(血管新生
阻害剤)が開発され、ガンなど
の治療薬として臨床治療に応用
されています。

血管新生が生じるためには、血
管内皮細胞の増殖が必要ですが、
これまで、生体内の血管内皮細
胞は全て同じで、増殖する能力
も全ての内皮細胞で等しいと考
えられていました。研究グルー
プは2018年に血管内皮幹細胞(
血管を作る源となる血管の幹細
胞)を発見し、その解析を継続
してきました。これまでに、血
管内皮細胞が全て同じという概
念は正確ではなく、成体の血管
内皮細胞には増殖能力の「差」
があることを明らかにしてきま
した。増殖能力の高い内皮細胞
は、たった1つの細胞から体の
中で大きく太い血管を作る事が
できることから、血管の幹細胞
のような性質を持つ、特殊な細
胞であることが分かっています。
血管内皮幹細胞を見つける事が
困難だったのは、内皮細胞を体
から分離して、1つひとつの内
皮細胞の性質を解析する事が困
難だった事が一因と考えられて
います。臓器から内皮細胞を分
離する方法はいくつか報告され
ていますが、血管内皮幹細胞の
分離に適した方法は確立されて
いませんでした。そこで今回、
研究グループは、体の中のさま
ざまな臓器から内皮細胞を分離
して、検討を重ね、その中に含
まれる血管内皮幹細胞を効率よ
く分離できる方法を確立しまし
た。

今回確立したプロトコールの利
点は、簡単で単純な操作により
内皮細胞と内皮幹細胞を効率よ
く分離できるという点にありま
す。まず、マウスの肝臓を解剖
用のハサミを使って細かく刻み
ます。その際、刻まれた組織片
と次の工程で用いる酵素が効率
よく反応するために、1mm以下
の断片になるように、鋭利なハ
サミを用いて細かく刻んでおく
事が非常に重要です。次に、切
った組織片をより細かく分解す
るために、細胞外マトリックス
を分解する数種類の酵素を用い
て、組織片を分散させていきま
す。この酵素と反応させる際に、
通常は酵素液の中に組織片をつ
けて温めるだけですが、本法で
は、組織片を浸した酵素液が入
ったチューブを連続的に機械で
振盪しました。この工程を、酵
素液を交換しながら数回繰り返
すことにより、細胞外マトリッ
クスが効率良く分解され、細胞
同士が分離される事で最終的に
は単一の細胞に分散されます。

今回確立した手法を用いること
で、血管内皮幹細胞を効率良く
短時間で分離する事ができ、さ
らには内皮細胞も大量に分離す
ることが可能となりました。こ
の処理時間の短縮が、生細胞の
割合の増加と細胞表面マーカー
の保持につながり、フローサイ
トメーターによる細胞分離も可
能になります。研究グループは、
「本法は、酵素反応の時間を変
更することで、肝臓のみならず、
肺や心臓,皮膚といった他の臓
器からも同様に血管内皮幹細胞
を含む血管内皮細胞を大量に分
離することができるので、全身
の血管研究の発展につながる事
が期待される」と、述べていま
す。

血管再生について解説している

動画です。

 
 


 
 
 化膿していた病変の制御が、
可能になる。       笑

 
 
 
 
 
 
 
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編集後記

 
 
 新潟大学が3月3日、卵巣成熟
嚢胞性奇形腫から発生したガン
に対する網羅的な遺伝子解析を
行い、ガンの診断や治療効果を
予測する可能性のある分子とし
て「XCL1」を同定したと発表し
たのは、素晴らしい業績です。
ガンの診断や治療効果を予測す
る可能性のある分子が今後沢山
見つかることで、ガン細胞を追
い詰めるステップとすることが
できるよう切に祈る限りです。
これらの分子を解析することで、
ガンは、将来怖い病気でなくな
る可能性があると私は信じてい
ます。
 大阪大学微生物病研究所が3
月3日、血管内皮幹細胞を高効
率に分離できる方法を確立した
と発表したのは偉大な業績です。
研究グループは2018年に血管内
皮幹細胞(血管を作る源となる
血管の幹細胞)を発見し、その
解析を地道に継続してきたこと
が花開いたと言えるのではない
でしょうか?増殖能力の高い内
皮細胞は、たった1つの細胞か
ら体の中で大きく太い血管を作
る事ができるというのは、初耳
でした。血管内皮幹細胞の分離
から、全身の血管研究の発展に
つなげて頂きたいものです。

 全身を地面に投げ出して匍匐
前進する。        笑

 
 
 
 
 
 
 
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