診療マル秘裏話　 号外Vol.1707　令和2年1月25日作成

作者　医療法人社団　永徳会　藤田　亨

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目次

1)ｽｳｲｰﾄ病は,治療後の血液疾患発症の観察が重要
2)子宮腺筋症解析から子宮内膜症併発の原因解明

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　医療界のトピックスを紹介するこのメールマガジンは
1週間に1回の割合で発行しています。もっと回数を増や
して欲しいという要望もあるのですが、私の能力のなさ
から1週間に1回が限度となっています。これからも当た
り前の医療をしながら、なおかつ貪欲に、新しい知識を
吸収し読者の皆様に提供してゆきたいと思っております。
不撓不屈の精神で取り組む所存ですのでどうかお許し下
さい。

1】 ｽｳｲｰﾄ病は,治療後の血液疾患発症の観察が重要

　突然の高熱と皮膚に赤い発疹
が表れるスウィート病は病因別
に古典型、悪性腫瘍関連型、薬
剤性に分類されます。とりわけ
25％程度の患者さんに見られる
悪性腫瘍関連型については、白
血病や骨髄異形成症候群などを
合併することが多く、「治療後
の観察がとても重要です」と大
阪市立総合医療センター皮膚科
の深井和吉部長は話しています。
スウィート病は、白血球の一種
である好中球の増加に伴い突然
に発症します。白血球中に占め
る好中球の割合は検査機器によ
り微妙に異なりますが、同セン
ターでは40～67％を基準値とし
ています。「スウィート病では
90％前後まで上昇します」と深
井部長は言っています。好中球
には、体内に侵入した細菌など
の異物を排除する免疫機能があ
ります。好中球の増加による過
剰な免疫反応がスウィート病の
誘因と考えられていますが、な
ぜ好中球が増えるのかについて
は分かっていません。

　スウィート病の症状は、39度
前後の急な発熱、高熱に伴う倦
怠（けんたい）感や関節の痛み
のほか、直径１センチ程度の赤
くて触るとやや固い複数の発疹
が顔、首、腕など主に上半身に
表れます。発疹は周囲との境が
明瞭で盛り上がり、中心部は軟
らかく、水疱（すいほう）のよ
うに透き通っています。30代以
降の女性に発症しやすいのです
が、患者数はそれほど多くあり
ません。スウィート病の診断は、
血液検査と発疹の形状から行い
ます。「血液のガンと呼ばれる
白血病や、正常な血液が作られ
にくくなる骨髄異形成症候群の
前触れとして、好中球が増え、
スウィート病として表面化する
ケースがあります。ほかの疾患
が隠れているということを前提
に血液検査を行います」と深井
部長は言っています。

　スウィート病は自然に治る疾
患ではなく、高熱、食事が取り
づらいという点からも、10日ほ
どの入院が必要になります。治
療はステロイド薬を内服し、症
状の改善に合わせて薬の量を減
らしていきます。

　スウィート病は一過性であり、
ほとんどが完治します。しかし、
治りにくくステロイド薬の内服
をやめられない、再発を繰り返
すという場合は、白血病や骨髄
異形成症候群が潜んでいる可能
性を念頭に置いて、治療後も観
察を続ける必要があります。

　「発熱を伴った発疹があり、
予防接種や採血などの翌日に注
射針を刺したところに赤いニキ
ビのようなものができるようで
あれば、スウィート病を疑って
皮膚科を受診してほしい」と深
井部長は話しています。

　年頭の所感を念頭に置いてお
話をする。　　　　　　　　笑

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2】 子宮腺筋症解析から子宮内膜症併発の原因解明

　国立ガン研究センターは12月
19日、子宮腺筋症のゲノム解析
と患者の臨床情報との統合的解
析を行い、子宮腺筋症がゲノム
異常を伴う多クローン性増殖疾
患であることを突き止めると共
に、高頻度に子宮内膜症を併発
する原因を明らかにしたと発表
しました。この研究は、同セン
ターと、東京大学、順天堂大学、
ガン研究会との共同研究による
ものです。研究成果は、「Natu
re Communications 」に掲載さ
れています。

　子宮腺筋症は、女性の20～30
％が罹患し、高頻度に子宮内膜
症を併発します。激しい月経痛
や貧血のほか不妊の原因にもな
っています。ホルモン療法など
による治療効果が低い場合は、
子宮を摘出することもあります。
子宮腺筋症は子宮内膜様組織が
子宮筋層で増殖しますが、かつ
ては子宮内膜様組織が卵巣や別
の臓器で増殖する子宮内膜症と
同一疾患として考えられていま
した。しかし、臨床上の特徴が
異なる点も多く、現在は別の疾
患として考えられています。近
年のゲノム解析により、子宮内
膜症については、ガン関連遺伝
子である「KRAS」に変異が入っ
た細胞が子宮の内膜に存在する
ことが、その起源であることが
明らかになりました。一方、子
宮腺筋症の解析は進んでおらず、
発症機構やなぜ子宮腺筋症で子
宮内膜症を高頻度に併発するの
かは不明のままです。

　研究グループは、東京大学と
順天堂大学の附属病院で手術を
受けた子宮腺筋症患者の病変組
織、病理学的に正常な子宮内膜
組織、併発子宮内膜症の病変組
織のゲノム解析を実施しました。
すると、子宮腺筋症の病変部（
子宮筋層に存在する子宮内膜様
組織）において、KRASの変異を
約40％に認めました。また、同
一のKRASの変異は、子宮腺筋症
のない患者さんの見かけ正常な
子宮内膜組織や、併発した子宮
内膜症の病変部においても認め
られました。これにより、子宮
腺筋症と子宮内膜症の病気の起
源となる細胞は、子宮内膜組織
で発生したKRAS変異細胞である
ことが明らかになりました。

　また、子宮内膜症のゲノム解
析から、KRASやPIC3CA遺伝子変
異が、病変部だけではなく、子
宮内膜組織においても確認され
ました。子宮腺筋症者でも、KR
AS遺伝子変異が、子宮筋層中の
病変部では70症例中26症例、子
宮内膜組織では18症例中10症例
で認められました。

　さらに、子宮腺筋症のKRAS遺
伝子の変異を有する患者群につ
いて臨床情報との相関性を調べ
たところ、子宮内膜症の併発率
が高いことが示されました。KR
AS遺伝子の変異を有する26症例
中22症例（84.6％）が子宮内膜
症を併発しています。両疾患が
高頻度に併発する機構の一部が
明らかとなりました。

　機構の言う事を聞こう。笑

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編集後記

　突然の高熱と皮膚に赤い発疹
が表れるスウィート病は病因別
に古典型、悪性腫瘍関連型、薬
剤性に分類されていて、とりわ
け25％程度の患者さんに見られ
る悪性腫瘍関連型については、
白血病や骨髄異形成症候群など
を合併することが多く、「治療
後の観察がとても重要という事
は、聞いたことがあります。た
だ実際の患者さんを診たことは、
ないので、何とも言えませんが、
副腎皮質ステロイドホルモンを
使った治療をするときは、短期
作用型のものを使い、分泌ピー
クに重ねて内服するようご配慮
頂けたら幸いです。
　国立ガン研究センターが12月
19日、子宮腺筋症のゲノム解析
と患者の臨床情報との統合的解
析を行い、子宮腺筋症がゲノム
異常を伴う多クローン性増殖疾
患であることを突き止めると共
に、高頻度に子宮内膜症を併発
する原因を明らかにしたと発表
したのは、偉大な業績です。何
事も原因が分かれば、対処法が
見つかると言うものだと思いま
す。子宮腺筋症と子宮内膜症の
病気の起源となる細胞は、子宮
内膜組織で発生したKRAS変異細
胞であることが分かったのも、
素晴らしい業績と言えましょう。

　子宮内膜症で至急手術を行っ
た。　　　　　　　　　　　笑

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