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診療マル秘裏話 Vol.73 平成17年4月28日作成
作者 医療法人社団 永徳会 藤田 亨

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
目次
1)  サリドマイドの抗ガン作用
2) 解熱鎮痛剤の抗ガン作用

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
1】サリドマイドの抗ガン作用

サリドマイドは1957年、ドイツ
のグリュネンタール社が催眠薬と
して開発し、副作用が少なく
目覚めも良かったので優れた薬と
して用いられました。当時本剤の
最大の特徴はその安全性でした。
動物実験では致死量が決定でき
ないくらい毒性が低いため、その
安全性を信じて多くの人が使用し、
鎮静剤として妊婦のつわりの薬と
しても使用されました。しかし、
妊娠した動物での安全性試験を
行っていなかったため、その強力
な催奇性(胎児に奇形を引き
起こす作用)が見のがされ、妊娠
初期の女性が服用した場合に、
アザラシ肢症という手足のない
(異常に手足が小さい)子供が生ま
れることが明らかになり、発売
中止になりました。

しかし、サリドマイドが
ハンセン病(らい病)という病気
のの特効薬だということがわかり、
アメリカでは数年前に再認可され
ました。さらに、サリドマイドの
作用メカニズムの研究において
「血管新生阻害作用」が明らかに
なり、ガンやエイズや種々の
炎症性疾患への治療効果が期待
されています。多発性骨髄腫に
対する効果は臨床試験でもすでに
証明されており、他のガンに
対する効果も臨床試験が進行中
です。らい病に対してブラジルで
使われた時は啓蒙活動が行き渡ら
なかったせいもあり、再び
アザラシ肢症の子供を大量に
出してしまいました。

サリドマイドにはガンの悪液質
(ガン細胞が放出する物質によって
体力の消耗や食欲不振などが起こる
状態)の原因である腫瘍壊死因子α
(TNF−α)の阻害作用がある
ため、進行ガン患者さんのQOL
(生活の質)の改善作用も期待され
ています。Gut誌4月号で、英国
サウサンプトン総合病院が
膵臓ガン患者を対象としたプラセボ
対照試験の結果を発表しました。
試験の対象は、悪液質をおこした
進行膵臓ガン患者47人(うち男性25人、
平均年齢70歳)無作為に2群に分かれ、
プラセボ(偽薬)または
サリドマイド1日200mgを24週間投与
されました。体重と前腕筋肉量を
4週目と8週目に評価するといずれも
サリドマイド群では低下が有意に
食い止められていました。しかし
ながら生存期間の日数は
サリドマイド群148日、プラセボ群
110日で有意差は認められなかった
といいます。つまり生存期間を
変えることはできませんでしたが、
体重が落ちないなど生活の質は非常
に改善されたといえるでしょう。
ときどきガンの在宅患者さんを担当し、
QOLの改善を家族から求められる
ことが多い私としては、もっと
もっと在宅の患者さんでも扱える
ようにしてほしいものだと思います。

サリドマイドのラセミ化についての動画

です。

 
www.youtube.com/watch?v=qtORPIFqUPg

 
 
 
 





苦痛の多いガンの末期では
サリドマイドが普通に、無痛に、
使える環境にしてもらいたいもの
です。笑

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

2】解熱鎮痛剤の抗ガン作用

3月15日発行のメールマガジンで
解熱鎮痛剤では、COX-2の選択的
阻害剤が心筋梗塞を引き起こす可能性
があるということを述べました。
もういちど簡単におさらいしておき
ますとシクロオキシゲナーゼ-2
(COX-2)は炎症性細胞内に存在して
プロスタグランジンを合成する酵素
として知られています。ここからが
過去のメルマガでは触れられて
いなかったことですが、COX-2は多く
のガン細胞にも存在して、増殖や転移
や血管新生を促進する作用が知られて
います。この酵素を阻害することに
より、ガンの増殖や転移を防ぐ効果が
期待できるのです。

多くの消炎鎮痛剤には
シクロオキシゲナーゼ阻害作用が
ありますが、炎症やガンで増加する
COX-2だけでなく、消化管や腎臓や
血小板などで生理的な作用をして
いるCOX-1も阻害するため、ガンの
治療には使いにくい欠点があります。
しかし、COX-2の選択的阻害剤であれ
ば、副作用が少なく抗ガン作用が期待
できます。ガンの患者さんでは食欲が
落ちていることが多く心筋梗塞を
起こすほどの動脈硬化病変をもち続け
ている人は少ないと考えられます。
特に日本人の場合は心筋梗塞よりも
脳卒中の罹患率が高く、アメリカほど
問題にならないような気がします。
余命がいくばくもない末期のガン患者
さんではなおさら副作用よりQOLの
改善の方が大事であると思われます。

COX-2阻害剤として、米国で
セレブレックスという薬が認可されて
います。この薬は、変形性関節症や
慢性関節リウマチのような炎症性疾患
と、大腸ガンのリスクが高い家族性
大腸腺腫症に発ガン予防効果を期待
して使用されています。消炎鎮痛剤と
してよりも、抗ガン剤として注目を
集めています。ところが3月15日発行
のメルマガのように心臓発作を誘発
する可能性からFDAが回収命令を
出したのです。副作用について非常に
神経質なFDAの体質からガンの末期患者
のQOLが損なわれる結果になりそうです。

膵ガン、大腸ガンのようにCOX-2産生の
強いガンの場合、疼痛の除去ばかりで
なく、ガンを休眠状態(dormant state)
に持ち込ませる可能性があります。
1日100〜400mgが投与されます。
サリドマイドとセレブレックスの併用
により、大腸ガンなどの進行ガンにおいて、
鎮痛効果と延命効果が期待されています。

日本での販売予定はなくなったのでは
という声が高いこの薬ですが、
サリドマイドと同様に回収命令が発令
される以前でなおかつ日本人医師で
あれば米国から輸入して使用することが
できておりました。しかしわざわざこの
薬を輸入する必要はなく、日本で
使われているCOX-2阻害剤を流用すること
が先決と考えられます。

ちょっと今回の内容は、難しかったと思い

ますので、おバカキャラのローラのCM

でコーヒーブレイクしましょう。なおこの

CMのイブプロフェンはCOX-2の選択的

阻害剤ではありませんのでご注意願い

ます。

 
www.youtube.com/watch?v=xNHnRaGFSfI

 
 
 
 








コービーブレイクの後は、鎮痛剤の基礎
について解説しているサイトを紹介します
のでご参照下さい。

http://kusuri-jouhou.com/medicine/enshou.html
副作用のある薬でも用法、用量が的確
であれば、末期ガン患者のQOLを改善する
ことが出来ます。ばかと薬は使いよう?笑

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
編集後記

今回はFDAによる回収命令がでた薬を
取り上げました。以外な古い副作用の
ある薬がQOLの改善という目的をもって
使われたとき、その威力を発揮すると
いう事実は素晴らしいことだと思います。
ただしその副作用を熟知し、考慮に
入れた上で使わなければなりません。
新しい新薬の開発には多額の薬の開発費
がかかる昨今こういった古い薬を
縦横無尽に使いこなす医師が一人でも
多くなってくれることを望みます。

石のように硬い意志を貫く医師。笑

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