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2012-03-01 00:00:00

カテゴリー:ブログ

診療マル秘裏話 Vol.331 平成21年4月8日作成


作者 医療法人社団 永徳会 藤田 亨





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目次



  

1)  RNA干渉を用いたガンの遺伝子治療

2) 再生医療の研究と国の指針の問題点





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 医療界のトピックスを紹介するこのメールマガジンは

1週間に1回の割合で発行しています。もっと回数を

増やして欲しいという要望もあるのですが、私の能力の

なさから1週間に1回が限度となっています。これからも

当たり前の医療をしながら、なおかつ貪欲に新しい知識

を吸収し読者の皆様に提供してゆきたいと思って

おります。不撓不屈の精神で取り組む所存ですので

どうかお許し下さい。





 

1】 RNA干渉を用いたガンの遺伝子治療



 ヒトにおいて、腫瘍細胞に入り込んでガン(ガン)を引き起こす

毒性蛋白(たんぱく)質の産生を阻害する遺伝子操作療法の使用

に初めて成功した研究が報告されました。RNA干渉(RNAi)として

知られるこの遺伝子操作療法は、RNA干渉の過程で二本鎖RNAを

合わせていわゆる“短い二本鎖RNA”(siRNA)を形成し、それを

細胞内に導入します。細胞内に入ったsiRNAは、特定の蛋白質生成

に通常用いられるメッセンジャーRNA(mRNA)を分解し、その

遺伝子発現を抑制します。この発見は2006年にノーベル賞を受賞

しましたが、研究には線虫が用いられていました。



 米カリフォルニア工科大学(CalTech、パサデナ)化学工学教授

のMark E. Davis氏らは、身体に注入すると腫瘍まで進み、siRNAs

を腫瘍細胞に導入し、指定されたタスクを行わせる極小のナノ粒子

システムを考案しました。今回の第1相臨床試験は、実際の

メラノーマ患者さんを対象に実施されました。



 治療後の生検によって、試験は計画どおりに進んだことが確認

されました。同氏らは、腫瘍に直接的ではなく、インフルエンザや

他の皮下注射と同様にナノ粒子を患者さんに注射しました。ナノ粒子は

順調に標的となる腫瘍細胞に向かい、適所のmRNAに付着し、問題の

蛋白質の産生を停止させました。研究結果は、英科学誌「Nature

(ネイチャー)」オンライン版に3月21日掲載されました。



 Davis氏は「副作用を抑えるにはプロセスの正確さが非常に重要

である。疾患に関与する蛋白質に選択的に向かうことができ、

標的外の影響を生じることなく、遺伝子レベルで攻撃して排除

したい蛋白質を排除する」という。同氏らは、同システムが、

多くの異なる遺伝子に到達し、これまで薬物療法をすり抜けてきた

腫瘍に作用する高度に標的化した選択的方法になると考えています。



 米フォックス・チェイスFox Chaseガンセンター(フィラデルフィア)

のGregory Adams氏は「実際に治療に使用するには改良や最適化が

必要なことは明らかである」としつつも、「これらは、基本的に

“この蛋白質を今発現させたくない”という指示書を細胞に導入

する。これは驚くべきことであり、大きな可能性を秘めている。

また、この療法は従来の遺伝子療法と異なり可逆的である」という

ことです。別の専門家も「これは、特定の蛋白質の産生を停止させる

ためにガンを促進する遺伝メカニズムに直接干渉するものである」と

述べています。



 認知症のβ-アミロイドは、どうでしょうか?タンパク質の産生

を中止させれば、これは世界注視の研究です。笑



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2】 再生医療の研究と国の指針の問題点



 けがや病気で傷んだ組織や臓器を治す再生医療の応用に向けた

研究が加速しています。広島市で3月18、19日に開かれた

日本再生医療学会では、様々な細胞に変化できるiPS細胞

(新型万能細胞)やES細胞(胚性幹細胞)の基礎研究と並んで、

実際の治療を見すえた応用研究が次々と報告されました。一方で、

臨床応用に向けた国の審査を逸脱するケースも発覚するなど、

普及に向けた課題も浮き彫りになりました。





 「国の指針に抵触するのでは」「院内の承認は受けている。

抵触などというものではない」3月19日のシンポジウムで、

人の脂肪に含まれる幹細胞(脂肪幹細胞)を使った臨床研究

を国の審査を経ずに実施した名古屋大病院泌尿器科の報告に、

座長から厳しい質問が繰り返されました。



 前立腺ガンの摘出で慢性尿漏れを起こした患者さんに、自分の

脂肪幹細胞を注射して尿道の筋肉の再生を促すもので、

後藤百万教授によると、2009年1-3月に70-80歳代

の男性計5人に実施しました。4人の症状が改善、尿漏れが

ほぼ止まった患者さんもいるということです。



 同科のグループはラットの研究を基に、08年9月に

医学部倫理委員会の承認を受けて着手しました。他の診療科

は国に審査を申請していることから、研究を一時停止し、

09年8月に申請したということです。一方で国には

臨床研究の実態は報告せず、同10月には韓国の国際研究会

でも「世界初の臨床研究」として発表していました。



 厚生労働省研究開発振興課は「人に対して行った時点で

指針に違反している」と指摘しました。名古屋大医学部も

調査委員会を設置するとのことです。後藤教授は

「知らなかったでは済まされない。認識不足を反省している」

と話しています。



 幹細胞で人を治療する臨床研究は、かつては各研究施設の

倫理委員会の審査だけで行っていたが、安全面で不明な点も

多いため、国が「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針」

を作成しました。06年9月から施設だけでなく国との

二重審査が義務づけられました。



 国の審査では、移植する細胞に医薬品としても承認される

ほどの安全性を求めているほか、犬や豚など大型動物の実験

を重視しています。患者さんに対しては、効果を強調せず、

安全性を最優先する研究であることを説明して同意を得る

よう求めている。



 研究者の間では「指針が厳しい」とする意見があるのも

事実です。審査が数か月から1年以上かかるため、準備が

長引き、安全を確保するための機器や検査の費用もかさむ

ということです。



 今回の学会でも再生医療の実現に向けて課題を話し合う

シンポジウムで「指針が安全性を重視するあまり、臨床応用

や研究で得られた特許などの知的財産権の対策を遅らせて

いる」とする声が上がりました。



 厚労省の専門委員会では現在、体の組織にある体性幹細胞

に限っていた指針を見直し、ES細胞やiPS細胞などを

含めた新しい指針づくりを進めています。同学会前理事長の

中内啓光・東京大教授は、学会会期中に記者会見し、現行の

審査について「(研究段階で薬事法レベルの安全性を求める

のは)現実的でない、過剰な規制」として見直しを求め

ました。



 一方、指針作成時の専門委員長だった中畑龍俊・京都大教授

は「(再生医療の)可能性を強調し過ぎて、慎重さを欠くべき

ではない」と話しています。指針に法的な拘束力はないが、

「期待が高い分、社会に受け入れられるには安全性の議論を

重ねることが、むしろ近道だ」と強調しました。





 今回の学会では、体にもともと備わっている「体性幹細胞」

を生かした研究が多く紹介されました。



 名古屋大で問題となった脂肪幹細胞ですが、骨や血管、筋肉

など幅広く姿を変える能力が明らかになっています。マウス

やイヌの動物実験で歯周病で傷んだ歯茎や骨、心筋、肝機能

障害を回復させた例などが報告されました。安全でたくさん

採取できるので、普及しやすい材料として注目を集めて

います。骨髄に含まれる間葉系幹細胞を用いた研究はより実用

に近付きました。自治医大と京都大は、生体肝移植で移植する

肝臓につながる血管「門脈」から幹細胞を注入すると、酵素の

異常な増加を抑えて、移植した肝臓が良い状態で生着すること

をラットの研究で示しました。年内にも臨床研究を行う準備に

入ります。



 国の指針の承認を受けている臨床研究の発表もあり、東海大は、

椎間板ヘルニアなどの患者に幹細胞を移植した6例の経過を

報告しました。



 研究が先か、承認が先か、卵が先か、鶏が先か、水掛論

です。笑



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編集後記



 RNA干渉を用いた臨床研究の話は、凄すぎると思い

ました。βーアミロイドや神経難病の原因となって

いるタンパク質に生産不可の指令を与えれば、臨床

応用の範囲は広いと考えています。しかしそのような

臨床応用の広くできる研究でも、勇み足をしてしまう

と元も子もありません。国の指針の承認の規制緩和は

絶対に必要です。たとえば、上記名古屋大のUroの

ように、他の国で発表してしまうと国際競争力が

無くなって他の国でやった二番煎じの研究が賞を

もらったりすると残念ということにもなりかねません。



 閑話ばかりでは、緩和しすぎてしまいます。笑

 



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